ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「昔の日々」

2014-07-27 21:47:25 | 芝居
6月6日日生劇場で、ハロルド・ピンター作「昔の日々」をみた(演出:デヴィッド・ルヴォー)。

ディーリー(堀部圭亮)とケイト(若村麻由美)夫妻の家に、ケイトの友人でかつてルームメイトでもあったアンナ(麻実れい)が訪ねてくる。
20年振りの再会にアンナは昔の日々を饒舌に語るが、ケイトの記憶とは噛み合わない。3人の奇妙な会話はいつ果てるともなく続くが…。

ハロルド・ピンターという高名な作家の作品、しかもその本人が、これまた有名な演出家デヴィッド・ルヴォーの「演出を熱望した傑作戯曲」、さらに
チラシ曰く「演劇的事件を見逃すな。…世界で最も官能的な舞台」、しかも麻実れいが出るので行くことにしたが、結果は失望に終わった。
そもそもピンターが不条理演劇の作家だということも知らず…我ながら実にうかつだった。
帰り道、一人の中年男性が連れに「全然意味分からない。拍手する意味が分からない。みんな意味分かって拍手してんのかな」とぶつくさ言って
いたが、評者も全く同感だった。彼の連れは「まあみんなよく頑張ってたんだからさ」と答えていた。
そうなのだ。実は評者も拍手したくなかったが拍手した。役者たちは確かに頑張ってたから。だが今後は、こんな時拍手するのはやめようかと思う。

演出家によれば、これが作者の「最も優れた作品」だそうだ。だとすれば、この人がノーベル文学賞をとったとは驚きだ。いくら英語圏の作家が
圧倒的に有利だからって。ノーベル文学賞の権威は地に落ちた(評者の中で)。もう二度とこの作家の芝居は見たくない。

そもそも3人だけの室内劇に日生劇場はでか過ぎるし。

雨の中はるばる日比谷まで出てきてこんなものを見るくらいなら、家で「リア王」でも読んでた方がずっとよかった。
いくら麻実れいのファンだからって、作品自体がつまらなければどうしようもない。

教訓:チラシの言葉を鵜呑みにしないこと。
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「ビッグ・フェラー」

2014-07-16 16:30:07 | 芝居
6月3日世田谷パブリックシアターで、リチャード・ビーン作「ビッグ・フェラー」をみた(演出:森新太郎)。

1972年、ニューヨークのアイリッシュレストランではブラディーサンデーの追悼集会が開かれていた。IRA(アイルランド共和軍)の
NY支部リーダー・コステロ(内野聖陽)はイギリスへの報復と組織強化への思いを熱く語る。
彼らIRA活動家たちの隠れ家はマイケル(浦井健治)のアパートメント。だが活動家と言っても彼らの日常はごく普通のNY市民であり、
コステロのようにアメリカンドリームをつかんだ成功者もいれば、マイケルのような消防士も、警察官もいた。
アイルランドから彼らのもとにやって来たIRA兵士でお調子者のルエリ(成河)は、ある日バーで親しくなった女性カレルマ(町田マリー)を
アパートに連れ込むが…。

配役がいい。ちょっぴり年の差の開いたカップルもいたように思えたが、みな集中力ある演技で好感が持てた。
内野聖陽はなかなかの好演。こういう役が向いているのか、かっこいい。
浦井健治はいつもながら爽やかな好青年役がぴったり。
成河が演じるのはおしゃべりな軽い男だが、この芝居では重要な役。この人には独特の魅力がある。初めてみた時、彼は「夏の夜の夢」の
パックを飄々とやっていたっけ(村井国夫のオーベロン、麻実れいのヒッポリタという最高のキャストだった)。

脚本は少し品が悪い(クリントンのくだりなど)。以前見た、この作家の「ハーヴェスト」よりあくどい。

コステロはなぜカミングアウトするのか。告白さえしなければバレはしなかっただろうし、誰も彼を疑ってはいなかっただろうに。
家庭的な不幸に打ちのめされたため、もう何もかもいやになったのだろう。彼はもうボロボロだった。だがその時、彼の中に最後に残っていた
良心が、彼を自白へと導いたのかも知れない。

ラストは2001年9月11日の朝。マイケルがいつものように出勤すると、しばらくして外で大きな衝撃音やサイレンの音が響き渡る。
彼は消防士だから、恐らく殉職したのだろう。
だが、鍋のタイマーをセットして出かけるという一点だけで感動を呼ぼうというのは弱過ぎる。彼はいつものように帰宅するつもりだった
のに、たぶん生きては帰れなかったのだろうな、とは思うが、たったそれだけで胸が締め付けられるとまでは行かない。

このようにラストが弱いので、むしろカットした方がいいかもだが、そこまでは実に面白い。
男たちのそれぞれの運命が、胸に迫ってくる。
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