8月1日世田谷パブリックシアターで、シェイクスピア作「トロイラスとクレシダ」をみた(演出:鵜山仁)。
トロイ戦争が始まって7年。トロイ王プライアムの末の王子トロイラスは、神官カルカスの娘クレシダに恋焦がれている。クレシダの叔父
パンダラスの仲介により二人は結ばれ、永遠の愛を誓い合う。しかしトロイを裏切りギリシャ側についたカルカスは、娘クレシダとトロイの
将軍との捕虜交換を求め、クレシダはギリシャに引き渡されてしまう。一方、トロイ王の長男ヘクターは、膠着した戦況を打破するため
ギリシャ陣営に一騎打ちの申し出を伝える…。
これは非常にマイナーな作品で滅多に上演されないが、以前BBC制作の映像をテレビで見た覚えがある。
よく知られているように、トロイ戦争はトロイの王子パリスがギリシャのメネレーアスの妻ヘレンを略奪したことが原因で起こった。元々の
原作はホメロスの「イリアス」だが、そこでの英雄たちは、シェイクスピアによってかなり人間臭く変貌を遂げている。
S席なのにうんと上の方で、2階と言っても実質3階位。世田谷パブリックシアターは何度も来たことがあるが、こんな悪い席は初めてだ。
訳は小田島訳。ダジャレが多いので(と言うか、いちいち笑えるような日本語のダジャレに変換しているので)すぐ分かる。
クレシダ役のソニンが今回も可愛くて確かな演技。
ユリシーズ役を今井朋彦にしたのが正解。この策士にぴったり。
アキリーズ役が横田栄司。この人の変化が見所の一つ。引きこもり⇒皆の態度の変化にあわてる⇒トロイにいる恋人からの手紙を読んで
すっかり明るくなり浮かれ出す⇒改めて不戦の決意を固める⇒愛人パトロクロスの死に逆上⇒策を練ってヘクター殺害
つまり彼はいわゆる「バイ」(セクシュアル)らしい。
このアキリーズとパトロクロスは、始め、ど派手な下着のような格好で登場するのでびっくり。
恋人からの手紙を読んで浮かれる様がおかしい。
トロイラス役の浦井健治はいつもながら爽やかだが、セリフが聞こえない時がある。特にラスト近く、クレシダから叔父パンダラス宛に
届いた手紙を読み、沈んだ声でコメントするが、その肝心のセリフが全く聞こえなかった。
衣装は、人によっては現代の服のようで、どういうコンセプトなのかよく分からない。
ヘクター役の吉田栄作は疲れていたのだろうか、声がかすれ気味で、あまり英雄らしくなかった。かつて「三文オペラ」でメッキー・メッサー
をやった時の颯爽たる姿と声を思うと、いささか寂しい。
パリスとメネレーアスが戦いつつ登場し、そのまま退場するシーンで、原作ではセリフは一つもないが、二人は客席のそばで戦おうとして
「おっと、一般市民だ」とか言ってあわてて武器を捨てて素手で戦ったり、しまいに客席の階段を駆け上がって逃げるパリスに向かって
メネレーアスが「返せ!」、パリスが「返さん!」と叫ぶなど、かなり自由にふくらませていて楽しい。
渡辺徹演じるパンダラスが思いのほか出番が多く、重要な役だ。演出家の信頼に応えて好演。3幕1場の歌のシーンも面白い。
ただ、おどけ者サーサイティーズらの会話シーンで、初演当時は大受けしたであろう箇所も、残念ながら面白くなくて笑えなかった。
これは仕方ないのか。
タイトルの二人が二人共生きていて、それなのに芝居は終わってしまう。シェイクスピアとしては例外的な変わった作品だが、見方を
変えれば実に現代的だ。
トロイ戦争が始まって7年。トロイ王プライアムの末の王子トロイラスは、神官カルカスの娘クレシダに恋焦がれている。クレシダの叔父
パンダラスの仲介により二人は結ばれ、永遠の愛を誓い合う。しかしトロイを裏切りギリシャ側についたカルカスは、娘クレシダとトロイの
将軍との捕虜交換を求め、クレシダはギリシャに引き渡されてしまう。一方、トロイ王の長男ヘクターは、膠着した戦況を打破するため
ギリシャ陣営に一騎打ちの申し出を伝える…。
これは非常にマイナーな作品で滅多に上演されないが、以前BBC制作の映像をテレビで見た覚えがある。
よく知られているように、トロイ戦争はトロイの王子パリスがギリシャのメネレーアスの妻ヘレンを略奪したことが原因で起こった。元々の
原作はホメロスの「イリアス」だが、そこでの英雄たちは、シェイクスピアによってかなり人間臭く変貌を遂げている。
S席なのにうんと上の方で、2階と言っても実質3階位。世田谷パブリックシアターは何度も来たことがあるが、こんな悪い席は初めてだ。
訳は小田島訳。ダジャレが多いので(と言うか、いちいち笑えるような日本語のダジャレに変換しているので)すぐ分かる。
クレシダ役のソニンが今回も可愛くて確かな演技。
ユリシーズ役を今井朋彦にしたのが正解。この策士にぴったり。
アキリーズ役が横田栄司。この人の変化が見所の一つ。引きこもり⇒皆の態度の変化にあわてる⇒トロイにいる恋人からの手紙を読んで
すっかり明るくなり浮かれ出す⇒改めて不戦の決意を固める⇒愛人パトロクロスの死に逆上⇒策を練ってヘクター殺害
つまり彼はいわゆる「バイ」(セクシュアル)らしい。
このアキリーズとパトロクロスは、始め、ど派手な下着のような格好で登場するのでびっくり。
恋人からの手紙を読んで浮かれる様がおかしい。
トロイラス役の浦井健治はいつもながら爽やかだが、セリフが聞こえない時がある。特にラスト近く、クレシダから叔父パンダラス宛に
届いた手紙を読み、沈んだ声でコメントするが、その肝心のセリフが全く聞こえなかった。
衣装は、人によっては現代の服のようで、どういうコンセプトなのかよく分からない。
ヘクター役の吉田栄作は疲れていたのだろうか、声がかすれ気味で、あまり英雄らしくなかった。かつて「三文オペラ」でメッキー・メッサー
をやった時の颯爽たる姿と声を思うと、いささか寂しい。
パリスとメネレーアスが戦いつつ登場し、そのまま退場するシーンで、原作ではセリフは一つもないが、二人は客席のそばで戦おうとして
「おっと、一般市民だ」とか言ってあわてて武器を捨てて素手で戦ったり、しまいに客席の階段を駆け上がって逃げるパリスに向かって
メネレーアスが「返せ!」、パリスが「返さん!」と叫ぶなど、かなり自由にふくらませていて楽しい。
渡辺徹演じるパンダラスが思いのほか出番が多く、重要な役だ。演出家の信頼に応えて好演。3幕1場の歌のシーンも面白い。
ただ、おどけ者サーサイティーズらの会話シーンで、初演当時は大受けしたであろう箇所も、残念ながら面白くなくて笑えなかった。
これは仕方ないのか。
タイトルの二人が二人共生きていて、それなのに芝居は終わってしまう。シェイクスピアとしては例外的な変わった作品だが、見方を
変えれば実に現代的だ。