ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「ある八重子物語」

2021-01-21 11:23:53 | 芝居
12月22日、東京芸術劇場シアターイーストで、井上ひさし作「ある八重子物語」を見た(演出:丹野郁弓)。
劇団民藝+こまつ座公演。
神田川が隅田川へと流れ込み、花街として栄えた柳橋。舞台は昭和16年から敗戦直後の昭和21年にかけての東京は柳橋にある古橋医院。
ここに集う人々は、水谷八重子に心酔する古橋院長を筆頭に、事務方、看護婦、女中まで全員が大の新派マニア。患者の身の上話もたちまち「婦系図」風の
筋書きに。そこへ八重子そっくりの「音楽のような声」をもつ芸者花代が登場、恋愛事件もわきおこって大騒動。はたまた「女形の研究」に熱中するあまり、
入営日に寝過ごし徴兵忌避者になってしまう大学生もからんで・・。
新劇から出発して新派で活躍した初代・水谷八重子。彼女の芸といきざまに魅せられた人々を爆笑とユーモラスな筆致で描く傑作戯曲(チラシより)。
1991年初演作。

劇の内容はタイトルとはちょっと違う。
水谷八重子自身は登場せず、彼女のファンたちの人生が絡み合い、敗戦前後の時局と共に話が進展する。
劇中劇が多用され、芝居好きにはたまらないが、新派や新劇をほとんど知らない評者には少々もどかしい思いもあった。
中で芝居好きな素人たちが演じて遊ぶ、いくつもの芝居の内容を知っていたら、さぞかし何十倍も楽しめるだろうに、と思うと残念だ。
それもあって、この作品はめったに上演されないのではなかろうか。

途中、芸者を着替えさせるのが仕事の男たちが、巡査と男子大学生に芸者の着物を着せるドタバタがあるが、全然面白くない。
ここは全く不要だ。
今回、役者全員によるしょうもない合唱が全くなくてほっとした。

役者はみな達者で驚いた(特に今まで名前を知らなかった方々)。
院長役の篠田三郎は若い頃のままの清々しさと美形で、誠実そうな人柄も好印象だが、演技は他の無名の役者さんたちの方が上だった。
花代役の有森也実については、最初、彼女の声を「音楽のような」というのはどうか、と思ったが、愛嬌があって美しく、また温かみのある演技で、
院長の心をつかむ人として充分説得力があった。




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「ピーター&ザ・スターキャッチャー」

2021-01-09 11:23:08 | 芝居
12月12日新国立劇場小劇場で、リック・エリス作「ピーター&ザ・スターキャッチャー」を見た(原作:デイヴ・バリー、リドリー・ピアスン、翻訳:小宮山智津子、
演出:ノゾエ征爾)。
2004年出版のファンタジー小説「ピーターと星の守護団」を元に舞台化され、2009年米国で初演。2012年にブロードウェイで上演され
トニー賞9部門にノミネート、5冠を勝ち取ったヒット作。今回が日本初演の由。
「ピーターパン」の前日譚。
ネタバレあります注意!

舞台はヴィクトリア朝時代の大英帝国。孤児の少年(のちのピーター・パン)は仲間とともに「ネバーランド号」に売られてしまい、船内で好奇心旺盛な少女
モリーと出会う。モリーは父アスター卿と同じく「スターキャッチャー」として、星のかけら「スタースタッフ」を守る使命を帯びていた・・・(チラシより)。

懇切丁寧な解説を載せたカラフルなパンフレットが有難い。
どうしてピーターパンは永遠に子供なのか、どのようにしてピーターはピーターパンになったのか、という物語。
書かれるべくして書かれた作品だ。

モリーと父は時々ドードー語やノルウェー語で会話する。特に後半でモリーがノルウェー語?で長い文章を話すのがすごい。
役者は皆さんなかなか達者。特にモリー役の豊原江理佳が出色。
黒ひげ役の櫻井章喜と、アスター卿(モリーの父)役の新川將人も好演。
女優が一人なのは残念だが、登場するのが船乗りと海賊と南の島の住人たちだから仕方ないのかも。

英国人は南の島の人々を野蛮人と呼ぶが、彼らから見れば英国人だって野蛮人だ、という今日的な視点が語られて快い。

ラストでピーターが仲間に肩車され、鳥のような奇声を発したが、あれは何なのだろう?
意味が分からない。
ユニークで楽しくて面白い芝居だったが、最後の締めが弱くて残念。

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