ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

5時のお茶~キャサリン・ヘプバーン

2012-04-26 22:11:00 | 芝居
3月29日銀座博品館劇場で、マシュー・ロウンバート作「5時のお茶~キャサリン・ヘプバーン」をみた(演出:鵜山仁)。

十朱幸代の一人芝居。
時は1938年9月。キャサリン・ヘプバーンと言えばアカデミー賞最多4回受賞した大女優だが、デビューから10年の
当時はただの落ち目の女優だった。彼女はコネティカット州の実家に一人住み、生い立ちとこれまでを語る。
人名が出るたびにバックスクリーンに白黒の写真が出るのが親切だ。
電話が次々とかかってくる。最初の恋人、弟ディック、元夫で現在は彼女のマネージャー・・。

客席に向かって「皆さん・・」と話しかけるのには驚いた。全体がそういう作りになっている。
彼女は「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラ役を熱望していたが、最終的にヴィヴィアン・リーという聞いたことも
ないイギリス人の女優がやることに決まったと知り、絶望するが・・。

彼女はリベラルな家庭に育ったが、それでも当時はまだ、女性が外で働くことに対する偏見は大きかった。
仲良しだった兄は15歳で自殺。しかも自ら命を絶ったのは彼だけではなかった。祖父も、伯父も、叔父も・・。それは
「ヘプバーン家の宿命」と言われた。
1幕と2幕の間に実家はハリケーンで流されるが、彼らは同じ場所にほぼ同じ大きさの家を再建した。
そして俳優スペンサー・トレイシーとの恋。彼は既婚者だったため、彼の死まで27年間事実婚だった・・。

波瀾に満ちた生涯だったようだ。ロウンバートの脚本がよく出来ている。
思いがけずいい作品に出会えた。
十朱幸代という人を生で見たのは初めて。セリフのとちりがやや多かったが、美しくて魅力的な人だ。











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オペラ「魔笛」

2012-04-20 22:21:54 | オペラ
3月22日彩の国さいたま芸術劇場大ホールで、ピーター・ブルック演出によるモーツアルトのオペラ「魔笛」
をみた。
オケの代わりにピアノ一台のみを使い、歌手はたったの9人。3時間かかるところを90分に短縮した翻案というので、
あまり期待しないようにして出かけた。

大蛇に追われ森に迷い込んだ若き王子タミーノは、すんでのところで助かり、夜の女王から、娘パミーナが悪者に
さらわれ捕えられていると聞く。パミーナの肖像画を一目見て恋に落ちた王子は女王から魔法の笛を授かり、
鳥刺しの青年パパゲーノと共にパミーナ救出の旅に出る。パミーナを捕えているザラストロとは何者か。タミーノは
恋する人を救うことができるのか・・。

舞台は例によって簡素。竹の棒がたくさん立てられていて、歌手たちがそれらを必要に応じて動かす。
3人の侍女も童子たちもいない。

モノスタトスは白人男性が演じ、捕らわれたパミーナの部屋に入りながら言う、「おれは心が黒いから・・」。これには
驚いた。ブルックが「心が」を付け加えたのだ。political correctness(差別的でないこと)を志向する適切で
立派な処置だ。従来この役は黒人が演じ、白人パミーナのことを「白いってきれいだなあ・・」と歌うのだが、
もちろんそこは省略。

パパゲーナが老婆のかっこうをして登場し、ひとくさり聞いたこともない短いアリアを歌う。「昔はよかった・・」
という内容。これにもびっくり。

夜の女王は娘に向かって「あなたの父が死ぬ前、胸の太陽の輪をザラストロに与えた。そして私もあなたも彼に
従うがいい、と言った」と話す。こういう解釈を加えることによって、不可思議な物語を分かり易くしようと
している。

ピアニストは達者で、陰影に富む名演奏だったが、ピアノ一台ではいかにも貧弱で、あの輝かしいオペラを知る
者としては欲求不満が募った。ブルックは大げさなオペラの組織に嫌気が差してこういう形を模索してきたと
言う。それは分からなくもないが、観客としては、こういうのもありか、という感じ。

歌手はフランス人が多く、ブルックの拠点がフランスなので、歌はドイツ語だがセリフは全部フランス語(字幕あり)。
モーツアルトの別の曲も挿入されている。

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三島由紀夫「サド侯爵夫人」

2012-04-16 14:45:05 | 芝居
3月12日世田谷パブリックシアターで、三島由紀夫作「サド侯爵夫人」をみた(演出:野村萬斎)。

18世紀末、絶対王政が爛熟を極め、退廃の色濃い都パリ。数々の乱行から逮捕・脱獄騒動を起こし、残酷かつ淫蕩な
スキャンダルがつきまとう「悪徳の怪物」サド侯爵に貞節を貫くサド侯爵夫人ルネ。世間体を重んじ、計略をめぐらせて
サドとの離別を迫る母モントルイユ夫人とルネは苛烈な対立を続ける。フランス革命勃発後、夫がついに獄から解放され
たのを知るや不可解な決断を下したルネの心情に宿る真実とは・・。

サンフォン伯爵夫人役の麻実れいは、予想通り今まで見た中で最高。

シミアーヌ男爵夫人役の神野三鈴は声もよく、好感のもてる演技。この人は最近波に乗っている。

サド侯爵夫人ルネ役の蒼井優は美しく、声もクリアで落ち着いているが、セリフと関係なく満面の微笑みを浮かべることが
何度もあり、それが不思議。それは紛れもなく10代の少女の無垢な顔なので、全くその場にそぐわない。彼女は果たして
この芝居をどの程度理解しているのか。

モントルイユ夫人役の白石加代子は全くのミスキャスト。何しろ最初のセリフを言いながら登場しただけで客席から笑いが
起こるほどの違和感。場違い。演出家はもちろんすべて計算済みだろうが、ここは全然笑わせるところではないのだから
変だ。どういう意図か、彼女だけ上半身が着物風で下がでかいスカートのような妙な衣装。

3時間半と長い。休憩を2回入れたこともあるが、こんなセリフあったっけ、と何度か思ったので、ひょっとしたら
これまで見た公演は一部セリフをカットしていたのかも知れない。これはノーカット版ということか。




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オペラ「スペインの時」・「フィレンツェの悲劇」

2012-04-10 17:50:59 | オペラ
3月11日新国立劇場中劇場で、ラヴェル作曲のオペラ「スペインの時」とツェムリンスキー作曲のオペラ「フィレンツェの
悲劇」をみた(新国立劇場オペラ研修所公演、指揮:飯守泰次郎、オケ:東京シティフィル、演出:三浦安浩)。

二つのオペラを大胆に連結させ、20世紀初頭の同じ町の広場を舞台に起こる二つの物語として上演。

「スペインの時」
  時計屋のトルケマダは週に一度仕事で外出する。この日は妻コンセプシオンにとって羽を伸ばせる日。詩人気取りの
  学生ゴンサルヴェとの逢引きを楽しむ予定だ。ところがロバ引きのラミーロがやってきて、時計の修理のため主人が
  帰ってくるまで店で待つという。コンセプシオンはゴンサルヴェとの時間を作るため、ラミーロに用事を言いつけ、時間
  を稼ぐ作戦に。そこへ、今度は彼女に熱を上げている銀行家イニーゴまで訪ねてくる。最後に彼女が選ぶのは誰?

「フィレンツェの悲劇」
  商人シモーネが帰宅すると、妻ビアンカしかいない家に王子グイドが訪ねてきていた。
  シモーネとグイドはたわいもない会話を交わし始める。この男と妻との関係を半ば確信し、探りを入れるかのような
  シモーネと、それをかわしつつ、時にシモーネを挑発するかのように堂々とビアンカの美しさを称えるグイド。
  ビアンカは妻として振る舞いながら、夫のいないところでは、グイドと愛の言葉を交わす。
  果たして三人がたどり着く結末とは・・。

背景で終始うごめく大勢の男女が邪魔。ハイドンなど古典的な作品の場合、こうした工夫が間をもたせてくれて楽しいが、
近代の作品の場合、逆に音楽をぶち壊してしまうことがよく分かった。
何しろまず音が出てくるまでが長くてびっくり。演出家によって書かれたセリフ劇が冒頭に挿入されたのだが、これが
全く不必要な代物で、ただ音楽の邪魔をしているだけなのだ。

若い歌手たちはみなよかった。オケもうまく、音楽的には申し分なかったので、凝り過ぎで場違いな演出が、なおのこと
残念だった。
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2011年に見た芝居の回顧&最優秀女優賞等発表

2012-04-01 23:02:24 | 回顧
やばいっ・・今にも桜が咲きそうな気配なのにまだ去年のまとめをしてなかった!・・どうしてこうノロいのか。
毎年改めて思うことだが・・。

というわけで、ここで大急ぎで昨年の総括をしておきたい。昨年みた30篇の芝居の中には素晴らしいのもあれば、サイテイのもあった。
その中から特によかったものをいくつか、みた順に挙げてみよう。

 ① 大人は、かく戦えり(ヤスミナ・レザ作)・・大竹しのぶ+秋山菜津子+段田安則+高橋克実で面白くならないはずがない    

 ② 夏への扉(ハインライン原作)・・劇団キャラメルボックスによる世界初演の快挙!(演出には一部納得いかない箇所あり)

 ③ ベッジ・パードン(三谷幸喜作)・・・時節柄、笑いを基調にしようと無理したため、一部で酷評されたように
                     内容が薄っぺらなのは否めないが、大泉洋と深津絵里がよかった

 ④ 雨(井上ひさし作) ・・・彼の最高傑作との呼び声は正しいかも(まだ全部みてないから断定できない)

 ⑤ 秘密はうたう(ノエル・カワード作)

 ⑥ 猟銃(井上靖作)   ・・・原作の力がまずあるが、これが初舞台という中谷美紀が素晴らしい

 ⑦ 岸田國士傑作短編集・・・文学座公演。3つの戯曲の組み合わせもうまい


  
 次に、恒例の賞を2名の方に差し上げたい♪

   ☆最優秀女優賞(ミランダ賞) : 中谷美紀(猟銃)
   ☆最優秀男優賞(フロリゼル賞): 大泉洋 (ベッジ・パードン)


その他、特に印象的だった役者さんたちは次の通り。

  笹本玲奈(日本人のへそ)
  麻実れい(トップ・ガールズ、キネマの天地、みんな我が子)
  鈴木京香(たいこどんどん)
  深津絵里(ベッジ・パードン)
  永作博美(雨)
  村井国夫(秘密はうたう)
  三田和代(同、キネマの天地)
  保坂知寿(秘密はうたう)
  朝海ひかる(みんな我が子)
  
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