【 2021年4月6日 記 】
店頭で見かけたこの本の「キャッチコピー」が「今、一番東大生に読まれている本」。一歩身を引いてしまう。それは東大生がどうのこうのでなく、この手の宣伝には中身を誇大に美化しようとする意図を感じるからで、東大生に恨みや劣等感を感じるモノではない。と言うのも、先日見た映画『ミナリ』が、その映画館”一押し”のように宣伝され、「アカデミー賞有力候補」とまでチラシに書かれているのを見て、期待して観に行ったが散々だった。ストーリー自体脈絡もなく、何を言いたいのかも不明!(別に観てきた妻も同意見!)そんなことがあった直後だったから、宣伝文句に躍らされてはいけないという警戒感が働いた。
しかし、購入して読んでみると新書版ながら、中身の充実した、なかなかの力作である。
冒頭「はじめに」で、著者は民主主義を巡る、相対するような3組の見方を提示している。
1つ目は、
A1「民主主義は多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある」
A2「民主主義の下、全ての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければいけない」
2つ目は、
B1「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。選挙を通じて国民の代表者を選ぶのが民主主義だ」
B2「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」
3つ目は、
C1「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」
C2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会をつくっていくための、終わることのない過程が民主主義だ」
これら相矛盾するような見解に対する筆者の《答え》は巻末の「結び」に示されている。
今まで、『民主主義』は誰もが肯定的にとらえる人類の宝のようなモノだと思っていたが、歴史的に観れば必ずしもそうではなかったと気づかされる。「民主主義」と「共和制」の範疇の違いや、自由との関わり合いなども、深くは考えず、何となくごちゃ混ぜに使っていたような気がする。途中の章は、民主主義の姿やそれに対する考え方を歴史的な経過と共に述べられている。
筆者のこの本を書かせた一番の問題意識・動機は、今の時代を覆う『民主主義の危機』である。「ポピュリズの台頭」、「独裁的指導者の増加」、「第四次産業革命の影響」、「コロナ危機と民主主義」の4つがそれである。
そう言われるまでもなく、今世界を見渡せば、トランプによって分断されヘイトがまかり通るアメリカや、中国共産党一党独裁による香港自治の破壊、ミヤンマー軍事クーデターによる民衆虐殺とプーチンの絶対支配など、《瀕死の民主主義》が浮かび上がる。また、コロナ禍で鮮明になったエルドアンやボルソナロ大統領の独善的な姿も。もちろんこの本でも、学術的な記述に終わることなく、これらの課題を正面に据え、どうしたらその危機を乗り越えられるかの観点で展開されている。
かつて学校で習った世界史の授業が、いかに表層的で、年代と意味のない言葉の暗記に終始していたかが、思い起こされる。と同時に、投票率の低さに象徴される日本の若者(若者だけではないだろうし、先進的な人もいるのだが)のふがいなさに日本の将来の不安を感じる。
店頭で見かけたこの本の「キャッチコピー」が「今、一番東大生に読まれている本」。一歩身を引いてしまう。それは東大生がどうのこうのでなく、この手の宣伝には中身を誇大に美化しようとする意図を感じるからで、東大生に恨みや劣等感を感じるモノではない。と言うのも、先日見た映画『ミナリ』が、その映画館”一押し”のように宣伝され、「アカデミー賞有力候補」とまでチラシに書かれているのを見て、期待して観に行ったが散々だった。ストーリー自体脈絡もなく、何を言いたいのかも不明!(別に観てきた妻も同意見!)そんなことがあった直後だったから、宣伝文句に躍らされてはいけないという警戒感が働いた。
しかし、購入して読んでみると新書版ながら、中身の充実した、なかなかの力作である。
冒頭「はじめに」で、著者は民主主義を巡る、相対するような3組の見方を提示している。
1つ目は、
A1「民主主義は多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある」
A2「民主主義の下、全ての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければいけない」
2つ目は、
B1「民主主義国家とは、公正な選挙が行われている国を意味する。選挙を通じて国民の代表者を選ぶのが民主主義だ」
B2「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない」
3つ目は、
C1「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」
C2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会をつくっていくための、終わることのない過程が民主主義だ」
これら相矛盾するような見解に対する筆者の《答え》は巻末の「結び」に示されている。
今まで、『民主主義』は誰もが肯定的にとらえる人類の宝のようなモノだと思っていたが、歴史的に観れば必ずしもそうではなかったと気づかされる。「民主主義」と「共和制」の範疇の違いや、自由との関わり合いなども、深くは考えず、何となくごちゃ混ぜに使っていたような気がする。途中の章は、民主主義の姿やそれに対する考え方を歴史的な経過と共に述べられている。
筆者のこの本を書かせた一番の問題意識・動機は、今の時代を覆う『民主主義の危機』である。「ポピュリズの台頭」、「独裁的指導者の増加」、「第四次産業革命の影響」、「コロナ危機と民主主義」の4つがそれである。
そう言われるまでもなく、今世界を見渡せば、トランプによって分断されヘイトがまかり通るアメリカや、中国共産党一党独裁による香港自治の破壊、ミヤンマー軍事クーデターによる民衆虐殺とプーチンの絶対支配など、《瀕死の民主主義》が浮かび上がる。また、コロナ禍で鮮明になったエルドアンやボルソナロ大統領の独善的な姿も。もちろんこの本でも、学術的な記述に終わることなく、これらの課題を正面に据え、どうしたらその危機を乗り越えられるかの観点で展開されている。
かつて学校で習った世界史の授業が、いかに表層的で、年代と意味のない言葉の暗記に終始していたかが、思い起こされる。と同時に、投票率の低さに象徴される日本の若者(若者だけではないだろうし、先進的な人もいるのだが)のふがいなさに日本の将来の不安を感じる。