【2014年5月25日(日曜日)】
森林軌道がとぎれたところから頂上に至る正規の登山道まで距離は短かったが、急勾配でもろい土の上に重なった枯れ葉が、足を踏み込むと身体ごとずり落ち、なかなか前に進めない。しかも、レールという補助点がなくなったため余計に時間がかかる。
この案内標識を見たときは心底ホッとした。
『白髭岳』は鋭俊な岩峰だが、木々の覆われているため恐怖感が全くないばかりか、そんな険しい頂に思えない。途中のやせ尾根も同じだ。木がなかったら転落の危険を感じるところもあったが、全くそれもなく、北山のゆるやかな尾根を歩いているときと同じ気分だ。
さすが最後の50mほどの登りは急だった。12時40分、頂上到着。約2時間遅れである。
頂上はちょっとした広場になっていて西の方向に大きく視界が開けている。東と南の大台ヶ原方面は木々の枝が邪魔をしてよく見えない。
【「白髭岳」頂上の一角-今西錦司の碑が 】
【大普賢岳方面拡大写真-背後に近畿最高峰の「八経ヶ岳」が見える】
そういえば、この頂上に立つまでひとりの人とも出会っていない。正規のルートをとらなかったと言えばそれまでだが。頂上にも誰も居ない。日曜日のこの天気だというのに、景色を独り占めにするのは《もったいない》感じもする。写真を撮っていると、反対側のルートから上がってくる人影があった。鳥渡林道の方からあがってきたという。写真を1枚撮ってもらったあと、こちらの写真撮影の申し出も辞退して、3分もいないで来た道をさっさと降りていってしまった。ああゆう人もいるんだ。
ラーメンを作る準備をしてきたが、水も少なくなり、箸も忘れたので非常食を口に放り込む。何とも惨めな昼食である。
景色を堪能したあと、13時過ぎ下山開始。急な岩だらけの斜面をおり、しばらく行くと先ほどの合流点に着く。ここからは《本来の下山ルート》を行く。
【「白髭岳」の岩峰-本来この姿は登ってくる時にみるはずだった】
なるほど、標識も整っていて道も安定している。振り返れば『白髭岳』の岩峰が聳える。登っているときは、あんなに尖っているようには感じなかったが。
登ってきたときの、あの軌道はどの辺を通っているのかと、左下方の谷を見るが、それらしきものは見えない。どうも、途中でルートをはずしたのではなく、全然違う道を登ってきたのではと思い始める。
そうこういううちに「小白髭」に着く。ここでその日、2人目の人に出会う。結局、山で出合ったのは山頂であった人とこの人の二人だけだった。
【ここにもシャクナゲが-この辺りではもう花の峠は越えているようで多くは散っていた】
「神之谷コース分岐」に15時到着。まっすぐ行けば神之谷の集落に降りる尾根ルートで、左に折れれば急な坂道を下り「東谷出合」へ至る。
【「神之谷コース分岐」-本来登山口からここに上がってくるはずだった 】
道は林間の快適なルートだ。やっぱり正規の登山道は楽ちんだ。日没を心配しないで歩ける。
しかしいったい登るときは、どのルートで行ったのだろうか。下山しながら考える。
《車が入る谷の最深部まで行って、距離を稼いでやろう》という気が先に立ち、先を急ぐあまり、地図の縮尺も考えないで、《車を停めたところが「東谷林道」の終点だ》と勝手に思いこんだのが間違えだった。
冷静に地図をみれば、400mの距離のところを3kmも進むわけがない。地図を改めてじっくり見ると、どうも「東谷林道」の入り口を通りすぎ、そのまま「神之谷林道」をどん突きまで3キロほど進んだことになる。
登ったルートは、どうも「1115mピーク」を左に見る「白髭岳直下の谷」を直登したようだ。これは「1242mピーク」と「小白髭」を結ぶ尾根道を通った帰り道に初めて感じ、「東谷出合」まで降りてきて地図をみて《やっぱりそうだったのか》と感じたことだった。
【「東谷出合」-奥が東谷林道の終点へ-本来ならここを曲るべきだった】
そうと分かったら、ここから3kmほど、車の置いてあるところまで戻らなければならない。
道は車道で滑る心配はないが、45分の道のりは長かった。
【ようやく車の置いてある林道終点あたりに到着】
温泉に入って帰ろうと思ったがそれどころではない。5時20分に車を走らせ、大宇陀、針、柳生、笠置を回って木津川から高速に乗り、午後8時45分に自宅に戻ってきた。
2014年5月25日『台高・白髭岳』へ