【2014年5月29日】
今日の朝刊やテレビの報道によると、28日に安部首相は「産業競争力会議」で『残業代をゼロ』にするための労働時間規制を取り払うよう指示したという。
その理由づけが滑稽だ。
『成果で評価される自由な働き方にふさわしい新たな選択肢を示す必要がある』というものだ。このセリフ、以前にもどこかで聞いたことがあると思ったら、かつての小泉首相が《規制緩和》を旗印に、非正規雇用を拡大する際、派遣労働の門戸を大きく広げたときに聞いた言葉だ。
『自由で多様な雇用形態』のその後がどうなっているか-「自由な働き方どころか、流動的で企業の都合に合わせた安上がりな労働力の確保の手段」であったことは、今や衆目の一致するところだろう。
『フルタイム勤務を希望する者』のうちの誰が好き好んで、「正社員」でなく「派遣」や「非常勤」を選択するだろうか。
だから、この間の派遣労働をめぐる制度改悪・労働条件の後退は、ひとり非正規労働者の問題ではなく、正職員を含む働く者、すべての人にかかわる重大問題と考えていたのだが、やはり次は正規職員がねらわれる。
職場の中で「正職員」と「非常勤」や「派遣労働者」が対立しあっている状況ではないのだ。
そして、「ホワイトカラー・エグゼンプション」だ。
今、「時間」でなく「成果」だと言い出すにはわけがある。《年収1000万以上の人だけを対象にするとか、限られた職種に限定する》というのは方便に過ぎない。「派遣」の時もそうだった。あとから、どんどん枠が外され適用範囲が拡大されていく。
管理職や一部の営業職などは、今回改めて制度を変える意向の以前から、残業代などはじめからない。いわゆる『名ばかり管理職』も安い給与にもかかわらず《管理職》の名目だけで残業代が未払いになっている。
行きつく先は、全労働者の『残業代ゼロ』が狙いなのだ。
安倍首相は、つらい戦争体験や長年の平和運動などの歴史から何も学ぼうとせずに「戦争の道」を突き進んで行くのと同様に、雇用・労働の分野でも、人権宣言や労働運動で働く者が《血と汗を流し獲得してきたもの》を、財界や一部の好戦家の利益のためだけに、一気に押しつぶそうとしている。
不思議なのは、安倍は妖怪かゾンビみたいなものだけれど、自民党内にもいると思われる《良識派》や首相のやり方に反対している人々が、どうして団結して大きな声を上げないかということである。