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最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

連載3-1992年の家族旅行記『卒業!パック旅行-わが家の北海道』と『幸福の黄色いハンカチ』の思い出

2014-11-24 10:55:20 | 山・旅行
 【前回のつづき】

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「祝卒業!パック旅行-わが家の北海道」-その3

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 第1日日からして宿に着くのが大幅に遅れると思ったのだが、2年前には確か無かったはずの盤越自動車道というのが猪苗代まで延びていて、運よくそれに乗る事ができ、5時40分に作並の岩松旅館に到着できた。
 ここのお目当ては川床にある露天風呂だ。さっそく男組と女組、三人ずつに分かれて、風呂に行く。一旦エレベーターで本館の地階まで下り、そこから屋根付きの長い階段をさらに下りていくが、途中から涜れの水音が心地よく響いてくる。パンフレットで見たとおりの湯が涜れに沿って並んでいる。これも1つに数えるのかなと思うのをいれて、熱いのやらぬるいのやら大小4つの湯がある。いちばん先端の『河原の湯』まで行くと、清流がその先狭くなり、切り立った岩の間をしぶきをあげて流れ落ちていく様が見られ、爽快である。また『鷹の湯』 に浸かり、上を見ると岩をくり貫いたような半洞穴に建てられた東屋の木地が歴史の古さを感じさせる。屋内の大浴場『不二の湯』も広びろとして、大きな湯船には満々と湯をたたえ、ガラス越しにみる渓流の緑も良かった。
 部屋に帰り、ゆったりとした気分で食事をとり、夕食後は子供達とプールに行く。室内プールというより地下プールと呼んだ方がいいような、貧相な感じのするプールは貸し切りで、他に誰もいないことをいい事に、林太郎が先頭になって皆で大騒ぎをする。その様子を妻がビデオで撮りまくる。
 翌朝、わたしは再度露天風呂に。気持ちがいい。後で女性軍にきくと、朝駆けを含め、何度も川床の露天風呂に挑戟したが、いずれも数人のおっさんが占拠しており、結局入れなかったとこぼしていた。朝食はバイキング。わが家のような大飯喰いの子供を連れた家族にはこれが一番である。
好きなものを好きなだけ食べられる。ゆずは、にこにこしながらデサートを何度もお代わりにいく。林太郎はカリ梅-青い小粒の噛んだらカリッと音のする梅をこう呼んでいるーが大好きで30粒ほど皿に並べ、得意顔である。それにジュースを何杯飲んだのだろう。旅館、ホテルに4泊した中で、朝食がバイキングだったのはここだけだったから、こんな時一番割符する摩生がいなかったのは残念である。

 それぞれ昼飯を食べなくていいくらいお腹に詰め込んで、8時半、宿を出発。仙台宮城で高速に乗る前、車も満タンにして一路北へ。きょうは高速をとばし早く青森に近づきつつ、できたら『十和田湖』でも回りたいと思う。東北自動車道は車も多くなく快適だ。平泉をすぎる。
 これより北の地に踏み込むのは、わたしも初めてだ。花巻やら盛岡やら地図上でしか知らない都市の街並を実際に右にみて、左にはあれが『焼石岳』のはずだ、今度は『岩手山』だと地図と見比べながら進む。
 真っ白な雪で覆われ、富士のすそ野を思わせるなだらかな曲線を描いた『岩手山』が見え始めたあたりで、それまで順調に涜れていた車の流れが急に前方の渋滞の列に突っ込むように止められてしまった。事故かな、と思った。前後にまばらだった車が、後ろを振り返るごとにその数を増やし、10分もすると渋滞の列の最後尾が確認できないくらいになっていた。それでも時速50km前後で動いては、時折ほとんど止まってしまう。どの辺で事故があり、いつこの渋滞から抜けられるのだろうかと、車の列の遥か前方と時計を交互に見るが、前方の様子はよく分からない。直前の車が右に左に車線を変えたり、抜けたりしているうちに渋滞の先頭が見えてきた。事故ではないのだ。その先頭には屋根に赤い非常灯を点灯させた二台のパトカーが走行車線と追越車線に平行に並び行く手を塞いでいる。何という《いけず》をするのだろう。天気は晴、路面には雪の影すらなく乾燥しているというのに。
 青函連絡船が午後の2時20分にしかなく、乗船場には1時間前の1時すぎには着いていなければならず、しかも北海道に渡るだけで4時間もかかるので、この日の行動の自由になる時間は午前中しかなかったが、とんでもないところで邪魔が入ってしまった。高速道路は目的地に早く着くためにだけあるのであって、高速道路から見る、どこも似たような景色への期待はない。その高速をトロトロ走るなんて、なんと効率の悪い。この調子だと、函館に上陸したら宿に直行するしかない。
 気がついたら、わたしの車と2台のパトカーとの間には数台の草しかなくなっていた。いつまでもこんな状態でいるのは精神衛生上良くない。岩手山サービスエリアに逃げ込んだ。さっきとは反対方向から見る『岩手山』が美しい。

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 旅行代理店に行く前に、第2日目と4日目の宿は安い公共の宿を自分で確保しておいた。4日目の札幌の宿は「どうしても一度はホテルに泊まりたい」という長女のたっての希望で、ホテル形式にした。今まで家族旅行でホテルに泊まりベッドに寝たことなどなかった。だいたいわたしも妻もベッドなど趣味でないし、せせこましいユニットバスみたいなのではくつろげないし、落ちつかない。『旅館で温泉に懐石』の方がずっといい。しかし、札幌では『すすき野』にくりだし、外食すると決めていたので、『たっての希望』もすんなり通ってしまった。
 1日目の東北と3日目はリッチに行こうと思い、JTBで適当な所を探してもらうことにした。東北は稲住温泉あたりに1泊目を取りたかったのだが、空いていないのではしかたない。3泊目は『登別温泉』にした。
 長男の合宿の日程が分かったのは、旅行まであと2週間と迫った時だった。滋賀県の守山で23日から4日間の予定であるという。すでに申し込んである日程とは2日重なる。それぞれの宿には申込時に、「もしかしたらあとひとり増えるかもしれない。」と、言ってある。
よし、途中で合流させよう。
 そう決まると、あとは交通手段だ。摩生の合宿の最終日は夕方5時ころ終わり、皆で京都駅に戻り、そこで解散ということであった。時刻表を調べる。京都18時22分発『日本海一号』函館行きというのがある。それに乗れば、翌朝の2時16分に函館に着く。これだ、これしかないと思った。
 翌日、27日発の寝台券が買えたときは、ほっとした。フェリーも現地清算ということなったが、無事確保できた。合宿に立つ朝、前の晩も示し合わせた合流計画をもう一度反復し、登別と札幌の宿の名前と電話番号を書いたメモに寝台券とお金を渡し、くれぐれも列車に乗り遅れないように、万が一、函館で会えなかったら宿に電話をして直接行くようにと、何度も念を押した。合宿用の荷物と合流までに必要な旅行用の荷物を一つの鞄に詰めて出て行ったが、はたして5日後に千キロ以上
も離れた一地点で、本当に会えるのか不安が残った。

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 岩手山サービスエリアで30分ほど過ごしただろうか。ガソリンを入れる。ここまでの走行距離1110km。本線にはもう車の渋滞の列はない。すでに時計は2時半を回っていた。ぐずぐずしていると船にも間に合わなくなる。前の渋滞に追いついたらどうしようと思ったが、青森に着くまでその影はなかった。途中、弘前平野にでると林檎の木の横で、昨年の台風十九号の被害で落下したというリンゴの埋立処分をしているのを見た。車内で相変わらずマンガを読むか、居眠りをしている子供たちも、この時ばかりは外に目をやり、
もったいないね。
 遠くには、岩木山が白く浮かぶ。

 青森のフェリー埠頭にはちょうど1時に着き、乗船手続きを済ませてから建物の2階で海を見ながら昼食の海峡ラーメンを食べる。船に乗ると、他の者は甲板に出て海を見たり写真を取ったりしていたようであるが、わたしは雑魚寝スタイルで枕と場所を確保すると、函館に着く直前までぐっすり寝てしまった。疲れないと言っても、やはり疲れたのだろう。函館港に入港する直前、わたしも甲板に上がると、皆は同じように海を見ていた。
 青函海峡をゆく間の長い時間、わたしにとっては思わぬ休息時間だったが、他の者にとっては本州を離れ北海道に渡ることを実感するのに必要な時間だったようだ。

 夕陽がきれいだ。誰かが、
金曜ロードショーみたい」と、言う。
 例えの妙に思わず笑う。裏からみる函館山は岩だらけの近より難い島のように見えた。

 函館の宿は『湯ノ川温泉』の『道南荘』である。社員旅行の時に泊まった『湯ノ川プリンスホテル』のすぐ近くだったが、探し出すのに時間がかかり、宿に入ったときはもう街灯が明々と点っていた。
 ここは郵便貯金の施設で国民宿舎みたいなものだから食事もあまり期待していなかったが、出された鮭の塩焼きは魚に目のない長女が絶賛するくらいの逸品だった。脂がのっていて身が締まりポロッとはがれる。素人のわたしにも、京都ではちょっと食べられないシロモノと分かる、なるほど美味しいものだった。別注で頼んだ『イカそーめん』はさすが本場の味。無造作に出されたものでも、美味しいものはやはり美味しい。海の物の好きな女組はもうこれですっかり北海道に魅せられ、しびれてしまったようだ。

 函館に来たらやはり夜景を見せてやろうと思ったのだが、函館山には雪がまだ残っており、車では上がれないという。ケーブルなら行けるが九時までだという。時計を見たら十分前だ。がっかりする。思い直して、それらしきものが見えそうな場所を求めて外出することにした。念のため門限を確認する。10時だという。もし遅れたらどうなるかと尋ねたら、
鍵をかけますから入れません
という、つれない返事。


                                          【「第4回」につづく】

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