この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

連載4-『幸福の黄色いハンカチ』の思い出と’92年の家族旅行記『卒業!パック旅行-わが家の北海道』

2014-11-29 22:37:25 | 山・旅行
 【前回のつづき】

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「祝卒業!パック旅行-わが家の北海道」-その4

 旅行第3日日、摩生と合涜する日がやってくる。函館に列車が到着するのは十一時過ぎだが、それまでの時間をどうしようかと、前の晩も地図とにらめっこする。いろいろ考えたが、《あしたの朝早く起きることができて、8時半までに出発できるようだったら『恵山』に行ってみよう、もし遅くなったら市内で時間をつぶそう》と自分で納得して明かりを消す。

 明けて28日朝、快晴の空を見て、8時40分『恵山』に向け、宿舎を出発。『恵山』は前の社員旅行の時の掘り出し物だった。火山と草原と海と波打ち際にある小さな温泉と。まるでその周辺だけが別世界のようであった。それをぜひ見せてやりたかった。海辺の道を快適にとばす。道の左側の狭い土地に時折民家が並ぶ。どの家の玄関脇にも灯油を入れる大きなタンクが目につく。津軽海峡の風をまともに受ける冬の季節はさぞ寒かろうと想像する。防波堤の上にはウミネコがだらしなく足もたたんで腹をコンクリートに密着させて暖をとっている。車が近づいてもうごこうともしない。のどかなものだ。本州に最も近い地点を示す表示を過ぎ、トンネルをいくつか越えると海の向こうに恵山が見える。

 恵山火口への道を登っていくとゲートがあり半開きになっている。かまわず登っていく。丘の向こうの海がだんだん下になっていく。しばらく行くと作業車らしき車にのっている人に呼び止められた。なんだと思ったら、ここは進入禁止だからすぐに出て行けとのことだった。どうしてかと思い、ジグザグに登っていく道の上方を見たら、白い雪を青い空に吹き上げて、除雪の真っ最中だった。函館山にしろ、ここにしろ一般の観光シーズンにはまだ早いんだなと思った。せめて中腹からの景色を楽しみたかったが、早く戻れと執拗にせかすので渋々降りてきた。
 防波堤の温泉に行ってみることにする。社員旅行の時は石田温泉の案内板はあっても、当の温泉がどこか分からず、行き止まりの道を何便も往復し、最後は人を見つけて尋ね、ようやく分かったが、今度は防波堤の壁に赤ペンキで『』と大きく書かれていたから、すぐ分かった。防波堤が覆いと屋根代わりになって海の方に開かれている、こじんまりした誰でも入れる無料の露天風呂だ。中には前と同じようにおじいさんがひとり入っていた。先客がいるので子供と妻はのぞき込むだけで入ろうとしないが、せっかく来たのでわたしが代表して入る。よそ者のわたしが入って行ってもいやな顔ひとつしない。いつもきれいに清掃されているので尋ねると、村の者が毎日交代で掃除をするそうだ。今はこんな空いているが、もうすぐ朝の漁から帰ってきていっばいになるそうだ。おじいさんは毎日、空いている時を見計らってここにつかりに来るのが楽しみだと言っていた。

 ゆっくりしたいが、そうもしていられない。服を着て大急ぎで同じ道を函館に戻る。思ったより早く、11時前に市内まで凄た。真っ直ぐ駅に向かったら駅前でだいぶ待つことになると思い、以前行かなかった『五稜郭』に立ち寄ってみる。車で周囲をぐるっと回り、土塁にたって堀を見回していたら時間がきてしまった。長男を乗せた列車の到着は、直前までてっきり、22分だと思いこんでいたら、16分着だった。今度は駅に行くまでのわずかな信号待ちの時間が気になる。他の者を車の中に残し、駅前の路上に車を放り出したまま、わたしだけ構内に入っていく。入場券を買い、改札口に急ぐ。改札口は出る人の列が続き、入ることができない。もしかしたらこれが『日本海』の乗客なのかなと思う。早く行ってやらねば。ようやく途切れたところで、勢い込む。跨線橋の階段を駆け上がる。列車を探す。三番線にブルーの車体が見えたので今度はホームに駆け降りる。違う、『日本海』ではない。側にいた駅員に、何番線に.着いたか尋ねる。
あー、もう退避線に入ってしまったね。8番線だけど。
 また階段を駆け上がり、八番線に急ぐ。走りながら跨線橋の上から八番線の方を見ると、列車も人影も見あたらない。下をのぞき込むように八番線の階段を降りていく。プラットホームは左に緩やかにカーブして遠くまで延びている。屋根を支える柱が重なり合って視界を遮るあたりに人影がひとつ。こちらを認めたのか、ゆっくりと近づいてくる。摩生だ。顔は定かでないが、歩き方からして間違いない。こっちは小走りに近づくが、向こうは引きずるようにゆっくりと歩いてくる。
摩生!よう来たな。
 まだふたりの距離は50メートル以上ある。声が届いたかどうか、相変わらず無表情で近づいてくる摩生の服装を見ると、連動靴にトレパンに白のTシャツ。毎日、練習から帰ってくる姿そのままである。5日ぶりに千キロ以上離れたところで再会して、こちらは感動しているのに、当人は服装といい表情といいいつも通りで、無感動を装う。
ごめんな。だいぶ待ったか?
 返事はかえさず、少しだけホッとした表情をして、並んで皆の待っている出口に向かって歩いていく。改札口の外では4人が大歓声で迎える。

 これでやっと家族6人全員そろった。車内の荷物の大整理をして、正午、函館を後にする。車内を流れる音楽の曲相も変わる。市を出た所で給油して、国道5号線をひた走る。スキー場を正面に見て『七飯町』をすぎ、峠にかかる。そしてトンネルを抜けるとそこはもう別世界だった。
わー、きれーエ!
 一同、思わず感嘆の声。大沼公園の小沼は一面、薄い氷で覆われ白く静かに湖面が広がる。その奥に真っ白なあの駒ヶ岳がツンと誓えている。北海道に上陸してから、わたしは案内役に徹している。今日、回るところはいずれも前回の旅行で行ったところばかりで、自ら初体験のような感動を得ることば期待していなかったのだが。自然は正直なものだ。大沼は前回、5月末に来たときと大違いだ。三脚を出し記念撮影をする。風景を見ながらそろりそろり車を動かす。大沼公園駅をすぎたと
ころでまた車を止める。駒ヶ岳は近寄り難いほど神秘的だ。もったいないが先に進まなければならない。

 『大沼』から『洞爺湖』に行くには噴火湾沿いに5号線を進むしかない。『長万部』でかに弁当を買い、車の中で食べる。車を止めている時間も惜しいから、わたしが弁当を食べる間だけ妻がハンドルを握る。長い道中、先にも後にも妻が運転したのはこの時だけだ。もっともわたしは助手席でハラハラしているより自分で運転していた方がつかれないのだから、それでいいのだが。

 『虻田』で運転を変わり『洞爺湖』方面に曲がる。峠を越えるとまたもや美しい風景が目に入ってくる。青い湖面と紫色の山並のむこうにうっすらと白くぽけた『羊蹄山』。しばらく見とれて、また記念撮影。『昭和新山』も見せておこう。湖畔から十分とかからず、噴煙のあがるふもとに着く。子供は何の変哲もない風景より、不思議さを感じされる自然の方が興味を示す。
ゆず、ここ前の日まで畑だったのが、一目でこんな山ができてしまったんだって。
ふーん。
 小5のゆずは不思議そうにドームを見ている。さすが火山の熱気でドームに雪はないが、広場のあちこちは雪だらけで、歩き回ると靴がグチユグチユになる。また、記念撮影をするぞというと、
えー、またーあ。
と、言って、特に男2人がなかなか集まらない。
 3時半。もう時間だ。『壮瞥町』の分かれ道で『オロフレ峠』が通れるかと尋ねると、通れるという。恵山も函館山もダメだったから、まさかとおもったが、ラッキー!
 『オロフレ峠』への道は進むごとに雪の量が多くなり、そのうち雪一色の景色になってきた。しかし、道路はきれいに除雪されている。路肩の雪は1メ一トルくらいあるだろうか。青空に雪の自さが映えてきれいだ。路面が濡れてスリップしそうな峠道を『カロロス』まで一気に下る。『登別』はもうそこだ。


 宿の第一滝本館の前に4時40分到着。登別の宿を選ぶ時、でかい風呂があるときいて、奮発してここに決めた。お茶もそこそこに、大浴場に向かう。ほんとにでっかい。浴槽がいくつもある。階段があって上も下もいろいろな種類の温泉がある。しかし、何か出来過ぎの感じがする。妻が、
ヘルスセンターにきているみたいね。
と、言う。
 露天風呂はタイルが敷き詰められ、塀にきれいに囲まれ情緒も風情もない。雪の原野に囲まれた野地温泉の方がずっと良かった。しかし、子供達はスライダーのある、さらに大きいプールで大はしゃぎだった。



                                          【「第5回」(最終回)につづく】

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