僕と猫のブルーズ

好きな音楽、猫話(笑)、他日々感じた徒然を綴ってます。
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最近読んだ本

2012年12月10日 | Art・本・映画
ここ数ヶ月で読んだ本の感想をザッと。

○「あるキング」伊坂幸太郎
 天才野球選手王求の人生を描いた伊坂さん新機軸の小説。
 伊坂さんらしい洒落た会話も無く伏線やどんでん返しもなく主人公の人生を淡々と描く。
 その才能があまりに凄く周囲から怖れられ孤立する王求。
 途中で魔女が出てきたりヘンな怪物が登場したりかなりぶっ飛んだ展開。
 正直「オモシロいか」というとウーン。なんかワケわかんないまま読み終わった。
 再読したら、また良さが分かるかも。

○「悼む人」「静人日記~悼む人Ⅱ」天童荒太
 この作品、以前から興味はありつつ重そうな内容で中々手が伸びませんでした。
 ただ最近出たⅡに天童さんが東北震災被災地を訪問したドキュメンタリーが掲載
 されてるのを知り、読んで見ました。

 事件の起きた場所を訪れ死者が「誰に愛されていたか」を聞き祈りを捧げる青年静人。
 「悼む人」では周囲の人物の目を通して彼のあり様を描きます。一方Ⅱは静人自身
 の視点で描かれている。
 静人は「死者のことを記憶する」ため全国事件が起きた場所を訪れ死者の知人に
 会い生前の人となりを聞きノートに記録し祈りを捧げます。
 静人の行為は喜ばれたり怖れられたり忌み嫌われたり反応は様々です。
 周囲の人は「なぜ、そんなことをする?」と静人に問いかけますが彼自身もよく
 分かってない。全く会った事がない人、犯罪者にさえ彼は等しく悼み祈ります。
 なんとなく昔読んだ「ビルマの竪琴」の水島が静人に重なりました。

 「死」というテーマを扱っているせいか、どうしても重苦しくなりがちですが
 「悼む人」は第三者の視点で描かれているせいか、スンナリ読めました。
 最後のスピリチュアルな展開もヤな感じがしなかった。
 むしろⅡの方が静人の迷いや逡巡がストレートに描かれ正直キつかったな。
 あと、恋愛話は無くてもイインジャナイかなぁ。

 被災地訪問ドキュメンタリーはTV局の被災地取材に天童さんが同行した手記。
 被災地、被災者に真摯に向かい「作家ごときに何が出来るかわかんないが
 チャンと見届けよう」との誠実な姿勢にうたれました。
 最後にTV局が天童さんのコメントを総て使わなかったことに触れています。
 それはとても大切なこと。でもTV局は使わなかった。
 もちろん編集の都合等あるんでしょうがボクはメディアの不誠実さを感じてしまった。
 (天童さんはTV局に対する批判は別に書いてないけど)

○「希望の国」園子温
 現在公開中の映画の原作と監督の福島ロケ日誌をまとめた本
 この映画は近未来の日本で原発事故が起こり運命を変えられた家族を描いてます。
  http://www.kibounokuni.jp/
 近未来との設定ですが、これはどう見ても現在の日本、福島を題材としています。

 前作「ヒミズ」(ボクは未見)で園監督は311被災地でロケを行い賛否両論でした。
 今回の映画も賛否両論を呼びそうな内容。テーマに腰が引けてスポンサーが中々
 つかなかったみたいだし。
 ボクはアーティストが311や原発をテーマに作品を創りたいならどんどんやればイイ
 と想う。「不謹慎」とか「早すぎる」とか非難する人も居るだろうが、誰もこんな
 作品を創らなければ世間はサッサと忘れてしまう。
 全員が取上げる必要は無いけど、取上げるクリエイターは絶対必要。

 映画の内容は公開中なので伏せますが(原作読んだだけでボクも未見(^_^;)
 園監督の東北訪問記は引き込まれて読んだ。
 ある被災地で外は荒野と化しているのにコンビニで雑誌を読んでる若者。
 何も無かったようにゲーセンで遊ぶ若者。
 何度も福島を訪問するうちに放射能を怖がらなくなるスタッフ。
 自分たちの家の有様をどんどん撮ってくれ、という石巻、南相馬の皆さん。

 あれだけ大きな事件があったのに「日常生活」というバケモノは丸でそれが
 無かったか、のように淡々と過ぎていく。人々もそれに乗っかっていく。
 園さんはそのことに違和感を感じる。
 だから311をもう1度実感するために、見る人に実感してもらいたくて
 この映画を創った。
 311から1年半が過ぎて東北に関するニュースはどんどん減っていく。
 取上げられるのは選挙だの原発再稼動に関係した「ついで」の場合のみ。
 Twitterを見てても「東北を応援しよう」なんてリツィートは流れてこない。

 先日、会社のある同僚は「復興振興税、払いたくない」なんてヌカしやがった。
 悪気はない正直なホンネだろう。周囲の人も笑ってたし。でもオレは笑えなかった。
 まだまだ東北復興は時間が掛かる。そのためなら多少の税金がなんだ?(あくまで私見)

 何か大きな流れが「忘れよう・無かったことにしよう」という方向に動いてる。
 何だかキモチわるい。オレはそこに流されたくない。ずっと憶えていたい。
 だから311という問題に正面から取組んでるクリエイターがいることにホッとした。
 「ヒミズ」そして「希望の国」はいつか見よう。

直近では伊坂さんの「SOSの猿」を読了。
西遊記とエクソシストと引きこもりと株誤発注事件をミックスさせたヘンな作品。
でもオモシロかったので再読しています。その感想はまた別の機会に(゚゜)\バキ☆

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