凡兆
灰捨てて白梅うるむ垣ねかな
半紙
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白梅の咲いている垣根のそばに、十能に入れた灰をぶちまけると、ぱっと灰かぐらが舞いあがり、真っ白な梅の花びらが灰かぐらの幕を通して、うるんだように見える。
(日本古典文学全集 42 近世俳句俳文集)
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暖房といえば火鉢のころ。炭や灰を運ぶための小さなスコップのようなものが「十能」ですが、
若い人は、知らないでしょうね。
まして灰を垣根のそばに捨てるなんて。
その灰がぱっと舞って、白梅を薄いカーテンのように覆うなんていう情景は
ちょっと作りすぎの感じもありますが、
案外、属目の景なのかもしれません。
ほんとに些細な日常の光景ですが
そこには、当時の生活の匂いが籠められています。