池西言水(いけにし・ごんすい)
鯉はねて水静か也郭公(ほととぎす)
半紙
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「伏見の川辺でほととぎすの声を待っていると、水の上に鯉のはねる音が聞こえて、あたりはいっそう静かになり、やがて、待ちかねていたほととぎすの声が、やっと聞こえてきた。」
(日本古典文学全集 42 近世俳句俳文集)
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一句のなかに、鯉とホトトギスを読み込みながら、
ゴテゴテとした印象はまったくなく、
むしろ、どこまでも透明な水のイメージがあるのは、
「鯉」も「ホトトギス」も「音」だけがそのありかを示し
実態が描かれていないことによるのでしょう。
言水は芭蕉の同時代人で、芭蕉とも交わりがあったようです。
この句は芭蕉の「古池や蛙飛びこむ水の音」と味わいが似ていますが
芭蕉の句が、水墨画の世界だとしたら
言水の句は、透明水彩画の世界のような印象があります。