マチンガのノート

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家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ 信田さよ子 角川新書 感想2

2021-07-09 23:23:07 | 日記

戦後の結構長い期間、子供が家の中で暴れたりすることが

家庭内暴力と呼ばれていましたが、親が家の中で暴れたり暴力を振るうことは、

親からの教育や思いやりの結果という予断を持って見られるか、無視されていて、

ちゃんと見れる人がいなかったのでしょう。

教員や医療関係者や心理関係者でも、親は物心両面で支援してくれたりするのが当然で、

それ以外の家庭を想像できなかったのでしょう。

夫や親からの暴力にさらされていても、経済的に豊かな生活を手放したくないために、

出ていかない人もいたのでしょうが、家を出て行こうにも生きていくだけの収入を

得る見込みが無かったり、支援してくれそうな人も見当たらなかったりなどで、

出ていけなかった人も多かったと思います。

以前は女性の就労機会も今よりずっと少なかったので、主婦などが一人で家を出ていっても、

できる仕事も少なかったことも大きな影響を与えていたのでしょう。

また、教員や医療関係者なども自分の周りと自分の家を比較するので、

それ以外を見たりすること自体があまり無かったのでしょう。

作家のブレイディ・みかこさんも高校時代に、家庭の事情で学校に通う定期代を自ら稼ぐために

アルバイトをしていて教員に見つかったときに事情を話しても、

そんな家庭は日本には無い、と教員に言われたとのことです。

いかに自分の実際に接したことのない事柄を想像すら出来ないかがよく分かる事例です。

東畑開人さんも、ツイッターで「信田さよ子さんを知っていたが知らなかった」と

書いていましたが、京大に入る優秀な頭脳を持ち、臨床心理の大学院を修了していて、

自分の周囲に無かった家庭のことを読んだり教わったりしていても、

三十代後半までそのような家庭のことは、見ていても気づかなかったのでしょう。

臨床心理や精神医学に関して教育することの難しさが解るところです。