’85年産まれの逢坂冬馬さんのデビュー作であり、’21年の本屋大賞受賞作です。
多くの書店で、平積みで売られています。
[感想]
内容のかなりの部分は、映画「ロシアン・スナイパー」(’15年ロシア・ウクライナ合作)や、
「スターリングラード 史上最大の市街戦」(’14年ロシア)を参考にして作られていました。
本書を書くにあたり、多くの事を調べたようですが、様々なところで、
上記の映画の内容を少し変えて使っているところが著者の限界を示していると思います。
また、第二次大戦当時のソ連国民や、ソ連兵やドイツ兵達は現代の日本とは
ものの捉え方、感じ方、そして生活の様々なところが大きく違ったでしょうが、
その事を考えて書いているようには思えませんでした。
扱っている題材と比べ、表紙の絵が小綺麗なことから、この本を作った関係者も、
それ程そのような事を考えずに作ったのでしょう。
そのため日本国内向けのエンタメ小説以上のものではありませんでした。
様々な表現が現代の日本的なので、違和感を感じるところが多かったです。
著者は若い方なので、歴史などに関する知識が浅く、このような小説になったのでしょう。
多くのソ連映画やロシア映画を観てきた人には、内容が浅く、物足りないだろうと
思いました。
歴史に関する世代間の知識の断絶を感じさせる内容でした。
本作が本屋大賞に選ばれたのも、書店員の歴史に関する知識が浅くなっているからでしょう。
それでも著者はデビュー作で、これだけまとめられるだけの才能があるので、
本作が売れたことに惑わされずにいれば、今後は良い小説が書けるように
なるのではないかと思いました。