気がつけば思い出Ⅱ

日々の忙しさの中でフッと気がついた時はもう
そのまま流れていってしまう思い出!
それを一瞬でも残せたらと...。

寒月をお題にした母の句~夫の介護

2023年01月13日 | 伊代の俳句

寒月のするどさ夫の手を取りぬ

季語:寒月(冬・天文)

【冬の月】寒月(かんげつ)・冬満月・冬三日月・月冴ゆ(つきさゆ)

冴えわたった大気の中で冬の月は研ぎ澄まされたように輝く。※俳句歳時記

     

父は70歳を過ぎた頃、脳梗塞で入院しその時は運よく退院できたのだけれど、その後、徐々に認知機能が衰えて行って、

70歳後半には、薬の管理やらその他日常生活で、出来なくなった部分を母に補ってもらい生活をしていた。

この頃母は、夜寝てから父が何度も起きるので、自分もなかなか睡眠がとれないと言っていた。

実家には長い廊下があり、その突き当りがトイレだったので、これは母が、父をトイレに連れて行く夜のことを詠ったのではないかと思う。

カーテンの隙間から見えた夜空の「冬の月🌙」に、現実の厳しさと寒月の鋭さを重ねたのだろう。

こんな短冊箱に母の俳句は入っている。

2019年8月からブログに載せはじめた母の句、この句で59句目となった。

      

昨日、晴れて比較的暖かかったので

夫の弟妹が結婚し実家を出るまでの間(息子達がまだ小さい頃)住んでいたアパート隣室のお世話になった人を訪ねました。

そのアパートで男子2人を育て始めた私は、既に男子3人を育てていたその人に、育児、家事と、いろいろなことを教えていただきました。

とても逞しい、優しい人でした。

子供達が大きくなると、その家族は海近くのマンションに引っ越し、私達も夫の実家に入り、各々仕事も忙しくなって、もう何十年も会っていませんでした。

退職したら、すぐにでも会いたいと思っていた人でしたが、その年からコロナ禍になってしまい、延び延びになっていました。

今年その方から、こんな年賀状が届きました。

「長い間お付き合い頂いてありがとうございます。年齢的にも今年で終わりにさせて頂きたいと思っております。おからだにお気を付けてお過ごし下さい」

年齢的って?今80歳?何か病気なのかな?と思っていると、電話がありました。

「変なハガキ出してごめんなさい。気を悪くしているかと心配になってしまい…」と・・・

聞くところによると、昨年の秋、心筋梗塞で救急車搬送され、ちょっと遅ければ危なかったようです。

同居している息子さんの機転と、すぐそばに市大病院があったことが幸いして一命をとりとめたけれど、

「足が不自由になり、手押し車がないとどこへも行けないので気弱になっているだけで、来てくれたら会いたい」とのことでした。

彼女は7年前にご主人を亡くされたのですが、胃瘻までして(看護師さんでもない)自宅介護を2年間遣って、看取った凄い人です。

義父にバナナを丸ごと渡し、ナースコールになってしまい、死なせるところだった私にはとてもできないと思います。

そのような人が気弱にって・・・

またまたコロナ感染者数が増えていて、私はともかくとして、うつしてしまっては…と少し躊躇したけれど「時は戻せない。思い立ったが吉日」…と会いに行きました。

崎陽軒の「冬」弁当とショートケーキ🍰を買って行き、お邪魔して4時間程、尽きないお話をしてとても楽しい時間でした。

帰りにはシーサイドライン駅の階段を上る私の姿が見えなくなるまで、マンションの前で手を振っていてくれました。

駅の近くにちょっとだけ咲いていた梅の花

      

私って、夫が先に病気になった時、母のように、彼女のように優しい介護ができるのでしょうか?

遣ろうと思っているけれど、正直ちょっと不安です!

その前に、夫より長く生きようとしている私がいます・・・

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稲をお題にした母の句~稲の道

2022年10月03日 | 伊代の俳句

稲の道女ざかりを過ぎしかな

季語:稲(秋)

傍題『初穂・稲穂・陸稲(おかぼ)・稲穂波・稲の香・稲の秋』

熱帯アジア原産のイネ科の一年草。

季語では、実った穂が垂れ黄金色に輝く秋の稲をいう。

◇日本での稲作は縄文時代の終わりに始まったといわれ、長い時間の経過のなかで日本人の精神文化の形成にも大きな影響を与えてきた。※俳句歳時記

      

「女ざかり」とは辞書で引くと「女性の、心身ともに成熟して最も美しい年ごろ」と書かれている。

年齢にしたら、何歳ごろのことを言うのだろうか?

立場(例えば男性と女性、年齢)などによりいろいろで、20代と思う人もいれば、50代と思う人もいるということだ。

これは、母の句の中でも解読が難しかった。

「田んぼ道を歩いていると、育てた稲が、黄金色の穂をつけずうっと続いている。

それが自分の歩いてきた道に重なって、子育ても終わり、自分の人生もそろそろ、後半へと進んでいるようだ」

と…詠ったのだろうと解釈をしたのだが・・・

そうだとしたら、母はこの時50歳代と…推察したのだが・・・。

※句の写真は実家裏の風景によく似ているものを探してお借りした。

ちなみに「女ざかり」という言葉は、セクハラになることもあるので注意した方がよさそうだ。

過去に「女盛りやな。年齢的にも身体的にも」と言ったセクハラ上司が訴えられたことがあるという。

たぶん訴えは、その言葉だけではなかったのだろうけれど・・・

「言葉は使いようでは凶器にもなる」というので・・・(名探偵コナンの中のセリフ)

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雲雀をお題にした母の句~雲雀野(夕茜)

2022年05月20日 | 伊代の俳句

雲雀野ニ風ハ強かり夕茜

雲雀が高く飛んで囀っていた野原も、夕方になると風が強く吹いて、空は茜色に染まっている

季語:雲雀野(春)

【雲雀】の子季語(傍題):告天子・初雲雀・揚雲雀・落雲雀・朝雲雀・夕雲雀・雲雀籠・雲雀笛

雀よりひと回り大きい鳥。茶色。草原・河原・麦畑などに枯草や根で皿型の巣を作る。
巣から飛び立つときは鳴きながらまっすぐにあがり、ついで急速に降りてくる。
『万葉集』に【うらうらに照れる春日にひばりあがり心かなしもひとり思へば】と大伴家持が詠んで以来、詩歌に多く詠まれてきた。

春の野に、高く朗らかに「ピーチュル」と鳴く声はいかにも春らしい。※俳句歳時記

      

この句の【夕茜】は、綺麗な言葉なのでもしかして季語?だったら・・・と季重なりを疑い調べて見ると、季語ではないようでした。

夕暮れ時に、空が日に照らされ赤く染まっている様子の「茜さす」という言葉があります。

茜空には季節の縛りは無いからだと思われます。

【夕焼】は夏の季語として、子季語にも、夕焼・夕焼雲・夕焼空などがあり、

この情景だと「夕焼・夕焼け空」かと思いますが、でもそうすると雲雀は春の季語なので季節違いの季重なりになってしまいます。

季語でない「夕茜」ならば重ならず、しかも5文字なのでそうしたのかもしれません。

この短冊に書かれた助詞(て-に-お-は)の二とハはカタカナになっていました。

このような俳句はあまり見かけません。

それに短冊の裏に鉛筆で「蝌蚪」と書いてあり、読めませんでした。

調べて見ると、読みは「かと・くわと」で「オタマジャクシ」のことだと知りました。

蝌蚪は春の季語で、母はこの季語でも詠んでみようとしていたのでしょうか?

もし母が生きていたなら、聞きたかった疑問がいっぱいです。

それにしても、母の句には雲雀を詠った句が多い。

過去ブログの記事2句

🔗【揚雲雀果てなき想い天に告ぐ】

揚雲雀をお題にした母の句-蓮華畑を思い出す・・・ - 気がつけば思い出Ⅱ

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🔗【揚雲雀吾は地を這う農婦なり】

雲雀をお題にした母の句~揚雲雀 - 気がつけば思い出Ⅱ

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※ヨシボーさん/写真AC揚雲雀吾は地を這う農婦なり気持ちよさそうに雲雀が囀りながらどこまでも空高く上っていくかたや私は地に這いずり作業をしている農婦です※すずしろさ...

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母は、嫁・妻・母のトリプル生活の中で、思いのままに動けない自分が居て、

春の日を浴びて、高い空を長閑そうに、ピューチュルルーと舞っている雲雀に、

ある意味羨望のような感情を抱いていたのかもしれません。

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独楽をお題にした母の句~昭和の遊び

2022年01月20日 | 伊代の俳句

※ミドPさん/写真AC

独楽の紐きりきり巻いて伸び盛り

季語:独楽(こま):新年(生活)

※俳句歳時記:正月の男児の玩具。独楽の古名は「こまつぶり」(「つぶり」は回転するものの意)といい、奈良時代以前に高麗(こま)から伝わったといわれる。

独楽は種類も遊び方も多彩。日本で最も古い独楽の胴は竹で、回りながら音を出すように作られ、後にごんごん独楽と呼ばれた。

小さな木の実に竹ひごなどの心棒をつけた独楽や穴あき銭に心棒をつけた銭独楽もあった。

江戸時代に鉄棒を芯にして木の胴に鉄輪をはめた鉄胴独楽が現れ全国に広まった。

      

正月遊び(羽根つきと独楽)

※maroe/イラストAC

私の子供時代は、まだこの様な遊びをしていました。

子供はあまり和装はしていませんが、大人は和装にする人が多かったような気がします。

特に女性はお正月くらいは着物姿という人もいた時代でした。

今はお正月でも滅多に和装のひとを見かけません。

母の句にはやはり時代を感じます。多分、孫のことを詠んだ句だろうと思います。

      

昔なら独楽遊びの時期だろう、今小3の孫、

一時期学校から帰ってくると「ばあばゲームやろう」とボードゲームを持ってきてやむなく付き合わされていましたがこの頃あまり来なくなりました。

去年のブログ🔗

 

四番目の孫 - 気がつけば思い出Ⅱ

ボードゲーム【カタン】※amazoncojp🎏もうじき端午の節句です。我が家も孫の兜を飾り、鯉のぼりをあげました。「今日は帰って来たら、ばぁばとカタンをするから…って...

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「イメージ「「何故?」と聞くと「友達とボイチャするから~」と言います。

「ううん??…ボイチャ」。

「ボイチャ」とは「ボイスチャット」とのことで、パソコンに設置したマイクを使うことで、音声を使ってリアルタイムにやり取りができる仕組み、

つまり、会話をしながら二、三人でゲームができるらしい。

コロナ禍で、外で遊べない子供たちのブームになったのでしょうか?

2階からそのボイチャする声が聞こえてきます。楽しそうです。

まあ~ばあばと遊んでいるよりは友達と遊ぶほうがいいけれど、

遊ぶ道具って変わったなと思うのでした。(やっぱりばあばになったんだと・・・)

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カマキリをお題にした母の句~枯れ蟷螂

2021年12月02日 | 伊代の俳句

※m*****************mさん/写真AC

枯れ蟷螂斧を翳して横断す

枯れ色のカマキリが斧の様な前足を振り翳し(かざし)道を横切っている

季語:枯れ蟷螂(とうろう) 冬

初冬に褐色のカマキリを見かけることがあり、昔の人はこれを蟷螂も草木と同様に枯れて緑のものが変化したと考えた。

しかし、カマキリには緑色と褐色のものがあり、途中から色が変わることはない。

「蟷螂枯る」という季語は事実に反するが、季節感を感じさせる言葉として今も使われる。※俳句歳時記

ちなみに枯蟷螂は(冬)の季語だが、蟷螂は(秋)の季語となる。

茶色のカマキリは枯れ蟷螂➡(冬の季語)緑色のカマキリは蟷螂➡(秋の季語)ちょっとややこしい。

             

枯れ蟷螂は体色を枯色「迷彩」にして落葉や草に潜み獲物を待ち構え、他の昆虫を捕食して食べる肉食の昆虫。

母はそのカマキリがたまたま道を横断していたのを見てこの句を詠んだのかもしれません。

「枯れているように見えるけれど、枯れてはいませんよ。」的な意味も含めているのでしょうか・・・⁈ 

※Arttectureさん/写真AC

蟷螂(カマキリ)をお題にしたもうひとつの母の句。

【斧揚げし蟷螂に視る己れかな】昨年のブログに載せたもの

OGPイメージ

蟷螂をお題にした母の句~カマキリの強がり - 気がつけば思い出Ⅱ

はむぱんさんの写真/写真ACから斧揚げし螳螂に視る己れかな季語:蟷螂(カマキリ)秋朝、庭掃除をしていたら、塀をよじ登るカマキリがいた。確か母...

蟷螂をお題にした母の句~カマキリの強がり - 気がつけば思い出Ⅱ

 

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