永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(266)

2009年01月05日 | Weblog
09.1/5   266回

【胡蝶(こてふ)】の巻】  その(14)

そのようなことを、お聞きになった姫君はただただ、お辛く取り乱しておいでになっていますので、源氏はさらに、

「いとさばかりには見奉らぬ御心ばえを、いとこよなくも憎み給ふべかめるかな、ゆめ気色なくてを」
――あなたがそれほど無情な方とは思っていませんでしたのに、ひどくお憎しみのようですね。このようなことを決して人に気取られないようにね――

 などとおっしゃって、女房達に気づかれぬよう、夜の更けないうちにお帰りになりました。

 玉鬘は、年齢としては、結構なお歳ですが、男女のことには疎くて、源氏のなさったこと以上のことが世にあるとも思われず、大変なことになったと嘆かわしく、ご気分も優れずにいらっしゃるので、女房達はご病気かと、困りはてております。

 事情を知っている兵部の君(筑紫から来て女房として仕えている)などは、源氏を褒めて何かとそっとお耳に入れることもありますが、玉鬘は疎ましく不運な身の上を嘆くばかりでした。

 翌朝、源氏からお文があって、(歌)

「うちとけて寝も見ぬものを若草のことあり顔にむすぼほるらむ」
―まだ打ち解けて共寝をしたわけでもありませんのに、あなたはどうして、事あり顔に塞ぎ込んでおいででしょうか(童女じみていらっしゃること)

 玉鬘は、ますますご気分が悪く、しかしお返事を女房達がすすめますので、厚ぼったい無風流な陸奥紙にただ、

「承りぬ。みだり心地のあしう侍れば、聞こえさせぬ」
――拝見いたしました。気分がすぐれませんので、お返事を申し上げません――

と、だけなのを、源氏はご覧になって、「こういうところは、なるほどしっかりしたものだ」と微笑なさって、さらに口説き甲斐があるなどと思われるのも、

「うたてある心かな」
――困ったお心癖ですこと――

ではまた。

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