But Not For Me/Ahmad Jamal
(Argo LP628)
帝王マイルスが気に入っていっていた事で、有名なピアニストがジャマルであるという事はよく知られた話ですよね。キラキラするようなエロール・ガーナー風の高音部、感性で選りすぐられたような少ない音で構成されるソロがその特徴ですよね。じゃあ何故マイルスと共演する事がなかったのでしょう?マイルスはガーランド、エバンス、ケリー、ハンコックとピアニストを入れ替えていきましたが、なぜジャマルをレギュラーピア二ストの椅子を与えるコトがなかったのでしょう?これについては、いろいろ意見があるかもしれないが、ジャマルが嫌がったのでしょうかねぇ・・・。本日は彼のアルバムでも最も有名と思われるシカゴのPershing HotelにあるPershing Loungeでのライブ録音です。
この会場は、6年間ジャマルがプレイして来た勝手知ったるラウンジですし、オーディエンスの暖かい反応を受けながらリラックスした雰囲気で自由にスウィングするトリオの快演が捉えられています。メンバーはレギュラートリオでJamal(p), Israel Crosby(b), Vernell Fournier(ds)の面々です。録音は1958年1月16日、この夜は43曲が演奏されたようですが、この中から8曲が選ばれ収録されています。得意のレパートリーであるタイトル曲"But Not For Me"と"Surrey With The Fringe On Top"が選ばれているのが興味深いですね。ジャマルスタイルの魅力を凝集したかのような2トラックですね。演奏曲は、B-1の"Poinciana"(これも後にインパルスで再演される十八番ですね。)をのぞけば他は全て2-3分の演奏というのも彼らのラウンジでのプレイスタイルをあらわしているように思います。他にも"Moonlight In Vermont", "No Greater Love", "Woody'n You", "What's New"等有名スタンダードがチョイスされているのも聴衆へのサービス精神が垣間見えますね。
所有盤はArgoのブラックラベル、シルバーロゴの両溝、フラットエッジのオリジナルです。ジャマルの特異なスタイルを示したピアノトリオの名盤の一つですね。
追記:本日、上記"But Not For Me"をアップしたところ、「I Wish氏」からこの翌日のセッションについてコメントを戴きました。下記がそうですが、このセッションは、"But Not For Me"の翌日のPershing Loungeのライブからのセレクションです。ジャマルが"But Not For Me"の8曲をセレクトした後、この2日のテープは完全にオクラいりとなったようですね。2年半を経過した1960年7月に、やっと陽の目をみたというのがvol.2です。
Jamal At The Pershing vol.2/Ahmad Jamal
(Argo LP667)
このライナーノートを紐解くと、ジャマル自身は『現在のスタイルとは異なるから』という理由で発売に対しては結構hesitateしていた様子がわかります。ここでも、スタンダードのジャマル的解釈が堪能できますね。"Cherokee"がmost favoriteですね。Crosbyのタイトなピチカート、Fournierのブラッシュワークの巧みさも一聴の価値がありますね。