Smithville/Louis Smith
(Blue Note 1594)
(Blue Note 1594)
モダントランペットについて話そうとするとやはりガレスピーから始めなくてはなりませんね。彼のスタイルからは2つの流れが発生し、ホットなプレイを主流にする流れと、より少ない音数でリリカルな表現に重きを置いた流れが出来上がったのです。前者の流れを踏襲したのがファッツ・ナヴァロであり後者の流れを追求したのがマイルス・デイビスであったと言われています。この中間のスタイルが、クリフォード・ブラウンであり、ホットな演奏とリリカルなプレイが同居した格好のプレイスタイルであったと言えるのではないでしょうか。このブラウニーの流れが多くの後継者を生んだと考えられています。バード、モーガン、ハードマン、そして本日の主役であるルイ・スミスなどがあげられると思います。中でもスミスは大学で学んだ豊かな音楽的知識をベースにしたインテリジェンス溢れるソロとラッパの美しいサウンドで知られる好プレイヤーですよね。本日は、このスミスのBN第2弾、当時の典型的ハードバップスタイルの演奏を収録した”Smithville”をアップいたします。
メンバーは2フロント3リズムの典型的ハードバップスタイルで、Louis Smith(tp) Charlie Rouse(ts), Sonny Clark(p), Paul Chambers(b), Art Taylor(ds)の五重奏団です。チェンバースのピチカートで始まりスミスが美しい音色で絡んでテーマが吹奏されるA-1, タイトル曲の出来が最高にいいですよね。ソロは逞しくブルージーなラウズのソロ、ブルリアントなスミス、そしてこういう曲想には抜群の相性を示すクラークの重厚で粘りのあるタッチが聴きものです。そしてB面トップの"Embraceable You"のリリカルなスミスのプレイはこのアルバムのハイライトと思います。クラークのイントロからスミスがテーマを吹くくだりのゾクゾクするような雰囲気は素晴らしいというしかないでしょう。続く"There Will Never Be Another You"とラストの"Later"はblowing session風の演奏で全員に充分なソロスペースが与えられており、各人の個性を生かしたプレイを楽しむ事ができますね。
所有盤はUnited Artistsの輸入モノラル盤です。シグナルポストの前でコートを着て微笑むスミスの表情がいいですね。1500番台後半の雰囲気がよく伝わるアルバムだと思います。