「損害縛り」詳細

2013-04-07 18:27:46 | 司法試験関連

「損害」縛りってのは,私の講義を受講されている人には改めて言う必要もないのですが,本試験も間近いので,ポイントだけまとめておきます。

第7回の設問3がある意味「全て」なのですが,まず「生の事実」として現に生じたいわゆる「損害」と,不法行為に基づく「損害」,債務不履行に基づく「損害」,取締役の善管注意義務違反に基づく「損害」は,「別物」です。ポイントは「~に基づく」「損害」と評価できるかどうかです。そのため,前提として,債務の内容,不法行為の内容,注意義務の内容が具体的に検討される必要があります。そして,その債務不履行を起因として生じた損害と法的に評価されて始めて請求が認められるのです。

例えば,第6回本試験の民法では当事者の合理的意思解釈を通じて「債務」の内容を重点的に聞いてきて,第7回では相当因果関係の範囲の問題として聞いてきた,というわけです。第5回では担保物権事例を通じて,「損害」とは何ぞや,を具体的に検討させています(いわゆる損害状態説なども聞いている)。

あとは,具体的な「金額」に拘る必要があります(これは実務が「差額説」を採用していることと無関係ではないでしょう)。まぁ,これは上記の問題と同じなんですが,「それに起因して生じた損害は幾ら」なのか」,という話です。第6回では設問に明確にその指示すら出ていました。あと第2回では信頼利益と履行利益の違い,という観点から「損害賠償はお幾らですか?」を聞いてきています。

因みにこの「額縛り」に関して言えば,今後は,「不当利得は幾ら」,とか,「必要費・有益費は幾ら」,「物上代位は幾ら」という形の「スピンオフ」出題が危ないですね。

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正しい民法の出題傾向

2013-04-07 17:11:46 | 司法試験関連

試験の傾向というのは,「大きな流れ」の中に位置づけて判断しなければその判断を誤ることなる。ありがちなのが,前年度の傾向のみに引っ張られる(過度に強調する)ケースである。公開模試などは,その形式上,前年度に合わせざるを得ないという限界があるが,それ以外は話は別である。

最近の例で言えば,第5回,第6回と本試験民事系の傾向が,やや論点チックになったことを受け(特に民法・商法),「旧司法試験に先祖帰りした」云々ぬかすパターンである。民法で言えば,「要件事実的なものは影を潜めた(=だからやらなくて良い),商法で言えば「実務的な要素が影を潜めた(=だからやらなくて良い)」という指導をしてきた人には,第7回の本試験の民法と商法の感想を聞いてみたいものである。まぁ,そういうことである。物事には「短期的予測」と「中長期的予測」があり,両者のバランスを欠いた分析は大変危険であるし,「正しいトレンド」を見抜くことはできない。

因みに,民法に関して言えば,第7回の本試験は今までの民法の出題傾向が全て凝縮している「完全版」である。

設問1が「要件事実的な発想を問う問題」,設問2が債権法改正を受けての「当事者の合理的意思解釈の問題」設問3が,「法解釈・理論を問う問題」(答案自体は民法416条に関する判例の見解をきちっと論じる必要がある。その際,有力説である「保護範囲論」との立場の違いを意識できていればもう最高である),そして民事系お家芸とも言うべき,「損害」縛りである。

これら4つが過去7回の本試験において,年による濃淡はあれど,試験委員が拘ってきた民法出題傾向「四天王」である。これらの観点から,民法の「正しい試験対策」を遂行すべし,である。

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