「損害」縛りってのは,私の講義を受講されている人には改めて言う必要もないのですが,本試験も間近いので,ポイントだけまとめておきます。
第7回の設問3がある意味「全て」なのですが,まず「生の事実」として現に生じたいわゆる「損害」と,不法行為に基づく「損害」,債務不履行に基づく「損害」,取締役の善管注意義務違反に基づく「損害」は,「別物」です。ポイントは「~に基づく」「損害」と評価できるかどうかです。そのため,前提として,債務の内容,不法行為の内容,注意義務の内容が具体的に検討される必要があります。そして,その債務不履行を起因として生じた損害と法的に評価されて始めて請求が認められるのです。
例えば,第6回本試験の民法では当事者の合理的意思解釈を通じて「債務」の内容を重点的に聞いてきて,第7回では相当因果関係の範囲の問題として聞いてきた,というわけです。第5回では担保物権事例を通じて,「損害」とは何ぞや,を具体的に検討させています(いわゆる損害状態説なども聞いている)。
あとは,具体的な「金額」に拘る必要があります(これは実務が「差額説」を採用していることと無関係ではないでしょう)。まぁ,これは上記の問題と同じなんですが,「それに起因して生じた損害は幾ら」なのか」,という話です。第6回では設問に明確にその指示すら出ていました。あと第2回では信頼利益と履行利益の違い,という観点から「損害賠償はお幾らですか?」を聞いてきています。
因みにこの「額縛り」に関して言えば,今後は,「不当利得は幾ら」,とか,「必要費・有益費は幾ら」,「物上代位は幾ら」という形の「スピンオフ」出題が危ないですね。