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風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

(25)心に残る英国のB&B

2005年07月24日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルからスタントンまで…軽い散歩のつもりだった。ところが、道を間違えて遠回りをしてしまったらしい。半日がかりのウオーキングになってしまった。スノーズヒルのB&B「シープス・コーム」に着いた時は2人とも疲労困憊していた。

その夜、娘が熱を出した。彼女にとっては生まれて初めての海外旅行なのだ。カルチャーショックもあったかもしれない。緊張も続いていたのだろう。今朝から食欲もなく、なんとなく元気がないのが気掛かりではあったのだが…。

娘に症状を聞くと、寒気がするという。雪の中を何時間も歩いて来たのだから、おそらく風邪をひいたのだろう。彼女の様子からそう感じた私は、オーナーの奥さんに頼るざるを得ないと思い、階下へ降りて行った。

奥さんに、昼からの娘の様子を説明した。英語が不得手なところに、気も動転しているものだから、ブロークンイングリッシュもいいところ。でも、事態が事態なだけに懸命に訴えかけた。すると、何とか通じたようだった。

寒気がすると言っているし、熱があるから風邪だと思う。医師に診てもらうほどではないが、今夜様子を見て、明日判断したい、そんな状況を伝えた。
「自家用の風邪に効く薬があったはずだから」と戸棚の中を探してくれた。

薬を手に娘のところに戻ると、奥さんとのやりとりが聞こえたらしく…。

「お母さん、駄目だよ!聞きたいことはちゃんと調べて整理してから質問しないと。すぐ言葉がでないから、奥さん困ってたじゃないよ。電子辞書だってあるんだし…」とのたまうではないか。

「そんなこと言ったって、辞書で調べる余裕なんてないよ。とっさに言葉が出てこなかったんだもん」

これじゃ、どっちが親だか、病人だか…?!分かったもんじゃない。

「そんな正しい英語を話そうとしなくていいと思うよ、お母さんは。通じることが大事なんだから」
そう言ったが、A型の娘は納得しないようだった。ちなみに私はO型、鷹揚というか、大雑把というか…。

英会話の議論どころじゃないじゃないのよ~。

「薬を飲む前に何か少しでも食べた方がいいんじゃない?」私が聞く。
「お母さん、味噌汁ある?」と言ったもんだ。
「ないよ。残念だね~。でもひょっとしたら1袋ぐらいあるかも…」

一呼吸置いてから、「インスタント味噌汁ありました!最後の1袋。良かったね~」
「うん」と満足そうに味噌汁を飲んだ。

「美味しいよ、お母さん!」
そして、生姜湯と薬を飲ませ、ベッドに休ませた。


後日談だが、この時、味噌汁が1袋残っているのを娘は知っていた。彼女の方が上手だったということか。日本を出発する前の日、私が味噌汁や生姜湯、せんべい、飴玉などをカバンに積めこんでいると…。

「なんで、そんなの持ってくの?私いらないからね」そう言っていた娘だった。
そして「あの味噌汁美味しかった!」としみじみと言った。

私はというと、小梅ちゃんや1口せんべいなどに気をとられて、肝心な風邪薬を入れ忘れたのだった。ほんとにドジな母親だこと…。


少ししてから、奥さんがケーキを持ってきてくれた。
「2階の部屋が空いているので、隣りに私も泊まりましょうか」―心配そうに言ってくれたが、丁寧にお断りした。
「何かあったら、下にいるので呼んでください」そう言って下りていった。

隣りにバスルームがあるので、タオルが熱くなると水で冷やして娘の額に乗せた。
昼、奥さんが貸してくれた日本人が書いた単行本「イギリスの小さな村を訪れる歓び」(※)を読みながら、娘を看病した。タオルがすぐ熱くなり、バスルームと部屋を何度も往復した。夜半に娘が目をさまして言った。
「お母さん、汗かいたよ」
「じゃー下着取り替えなさい」
熱も少し下がったようだ。着替えを済ませてさっぱりした顔をしている。

「さっき奥さんがケーキ持ってきてくれたよ。ショコラかな、少し食べてみる?」
「うん、少しね」
「そうだ、手作りのスコーンも持ってきてくれたんだけど、両方食べる?」
「う~ん、スコーンがいいかな。ケーキあとで食べるよ」

紅茶を入れて、しばしお茶の時間。熱が下がり、食べる意欲が出てきた娘を見て、私はほっとした。娘が寝てからもしばらくは本を読んで起きていた。一冊読み終えて、寝る前にもう1度娘の顔をのぞくと、スヤスヤ寝息をたてている。安堵感から私も深い眠りに落ちていった。


昼、スタントンをウオーキングで往復して無理をしてしまったのだろう。
帰路は、B&Bオーナーに来てもらおうと、言ったのだが…。
娘は「大丈夫だよ」と言い張るばかりで、私の提案を受けつけなかったのだ。ついつい我慢してしまう娘に、

「我慢も限界を過ぎると、時によっては悪い結果を招く事があるから。人に迷惑をかけることになるから、気をつけて!」
すっかり回復したあとで娘に言った。
すると「うん、分かった」と答えたのだった。

※「イギリスの小さな村を訪れる歓び」木島タイヴァース由美子著/インデックス・コミュニケーションズ発行―本の中でこのB&Bが紹介されているというので、オーナーの奥さんが見せてくれたのだった。
コメント (5)
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