小学生のわたしは漫画家になりたかった。
鉛筆と紙があれば生きていけると思うほどだった。
右のくすりゆびのペンだこ。
夜なべして漫画を描き続けていた。
中学生のわたしは小説を書きはじめた。
絵ではなく、言葉だけで表現するむずかしさにぶち当たった。
あたまのなかは空想世界。
夜なべして世界を作りあげようとした。
高校生のわたしは詩を書いた。
浮き雲のようにこころに浮かんだことを、なにも考えずに表していた。
なんの障害もなく一直線に出てきたことば。
やっぱり夜なべして机に向かっていた。
いつからか、書きたくても無意識に上手く書こうと考えてしまって、つまづいてしまった。
そんなとき、あるきっかけでまっしろな紙を前にして、自然に、こころに感じるものがすんなりと右手を伝わってことばに表れる、あの感覚がよみがえった。
ああ、帰ってきた。
わたしはここからはじまり、ここに帰る。
窓の向こうの、暗くなってゆく空の蒼い静寂を見上げながら、そう思った。
あのきもちを失いたくない。
大人になったわたしは、なにを書こう。
―パン職人めざし修業中の末娘記―
鉛筆と紙があれば生きていけると思うほどだった。
右のくすりゆびのペンだこ。
夜なべして漫画を描き続けていた。
中学生のわたしは小説を書きはじめた。
絵ではなく、言葉だけで表現するむずかしさにぶち当たった。
あたまのなかは空想世界。
夜なべして世界を作りあげようとした。
高校生のわたしは詩を書いた。
浮き雲のようにこころに浮かんだことを、なにも考えずに表していた。
なんの障害もなく一直線に出てきたことば。
やっぱり夜なべして机に向かっていた。
いつからか、書きたくても無意識に上手く書こうと考えてしまって、つまづいてしまった。
そんなとき、あるきっかけでまっしろな紙を前にして、自然に、こころに感じるものがすんなりと右手を伝わってことばに表れる、あの感覚がよみがえった。
ああ、帰ってきた。
わたしはここからはじまり、ここに帰る。
窓の向こうの、暗くなってゆく空の蒼い静寂を見上げながら、そう思った。
あのきもちを失いたくない。
大人になったわたしは、なにを書こう。
―パン職人めざし修業中の末娘記―