3月3日まで国立新美術館で開催中の、現日春季書展に先週お邪魔しました。
最初の「夢」は、越智麗川氏の作品の最後の部分です。
「汚れつちまった悲しみは 倦怠(けだい)のうちに死を夢む」
全文は、中原中也の詩「汚れつちまつた悲しみに」
汚れつちまつた悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは たとへば狐の革衣(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは 小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは 倦怠(けだい)のうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに なすところもなく日は暮れる
この詩の意味については、解釈が色々あるようですが、
越智氏の作品の中の、墨量や筆致、行間、字間といった空間から、
私なりに感じるものがありました。
固く絞った手ぬぐいから、尚も悲しみを搾り出すような激しい思いと
時折ふと我に返った瞬間の情の深さと。絶望と倦怠と。
そして、少し離れたところにたゆたうような 「夢む」。
そこにある、忘れてしまいそうな、希望。
そこにある、いとおしい、慈しむような、希望。
この作品は、書展会場だけではなく、
本当にこの作品を必要としている方のもとへ是非、届けて欲しいなぁと
ふいに、こみ上げる思いがありました。
もうお一方、TENのメンバーでいらっしゃる木原光威氏も
今回、中原中也の詩を書かれていました。
また違った魅力溢れる作品です。
次回はその木原氏の作品もご紹介します。