Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(1/2)

2009年12月13日 23時07分36秒 | Weblog

きみが選んだ死刑のスイッチ』、12月に読了。森達也著。理論社YA(ヤングアダルト)新書。よりみちパン!セ。2009年5月刊。

 
「第1章 罪と罰」、「第2章 冤罪」、「第3章 裁判員制度」、「第4章 死刑」。

 裁判員制度。「・・・理解しやすくて長引かない裁判を目指すのだ、ということになる。/やれやれ。/言っているそばだ。・・・/・・・つまり丁寧で正確であることが、裁判にとっては、何よりも優先すべきことなのだ。わかりづらいとか長すぎるとか、そんな理由で簡単に変えるべきではない。/・・・法務省や司法関係者が本当にそう思っているのなら、まずは自分たちで、これを改善する努力をすべきだと僕が思う」(pp.124-125)。「・・・司法改革の焦点は、「無罪推定の原則が消えかけている」こととか、「裁判所が世論を気にしすぎている」ことなどではなく、「民事司法の手続きをもっと簡略化しよう」との趣旨だった。/またこれだ。簡略化。つまりわかりやすさ」(p.149)。

 代用監獄。「・・・すべて実際にこれまであったことだ。・・・公正な裁判を行うためには、まずはこの代用監獄という制度を、変えねばならない。ところがなかなか変わらない。こんな制度は世界でも稀だというのに」(p.139)。

 ポピュリズム、世論に迎合。「その一例が、弁護士へのバッシングだ。・・・たとえば、「光市母子殺害事件弁護団に対するバッシングはひどかった。雑誌などには「鬼畜弁護士」などのフレーズが何度も掲載された。・・・日本全国から毎日のように、「死ね」とか「悪魔」とか書かれた葉書やカミソリが入った手紙などが、送られてきたらしい。/・・・子供の頭に打撲のあとはいっさいなかったことが判明した。/つまり、検察側の主張はだった。嘘は言いすぎかもしれないけれど、少なくともこれについては、事実ではなかった。/でも多くの人は、こんなことも知らない。なぜならメディアが報道しないからだ。検察側の主張は、あれほどに大きく報道したのに」(pp.143-144)。
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●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(2/2)

2009年12月13日 23時04分46秒 | Weblog

森達也著、きみが選んだ死刑のスイッチ

 「早く死刑に!」。「・・・今後は裁判が極端に迅速化される見通しだ。つまり進行が早くなる。でも被告人の利益を損なうような裁判の迅速化は、憲法で規定された「適正手続きの保障」(憲法三十一条)と「公平な裁判を受ける権利」(憲法三十七条)を侵害する可能性がある。/・・・「麻原裁判」は・・・他の事例と比較しても決して長くはない。/少し調べれば分かること。でもこのときは「なぜ早く死刑にできないのか式のメディアキャンペーンが展開・・・」(p.152)。
 「死刑、あたりまえ?」。「・・・「光市母子殺害事件」・・・/裁判長が死刑を言い渡したとき、広島高裁周辺に集まっていた数百人の群衆から、大きな拍手と歓声が沸きあがった。・・・これほど多くの人が喜んだということになる」(pp.176-177)。

 市民感覚。「今以上に安易に「市民感覚」を法廷に導入することが、どれほどに危険なことかを、あなたに実感してほしい」(p.166)。

 ミッテランが法務大臣に任命したロベール=バダンテール弁護士はすぐさま死刑廃止案を提出。スピーチで「・・・明日、みなさんのおかげで、フランスの司法はもはや人を殺める司法ではなくなるのです。明日、みなさんのおかげで、・・・人目をしのんでじっそり執行される、私たちの共通の恥である死刑がなくなるのです。明日、私たちの司法の血塗られたページがめくられるのです」(p.210)。

 タイトルの「死刑のスイッチ」。「・・・人の生命を自分が奪ってしまったという罪悪感はすさまじい。だから精神を病んでしまう刑務官も少なくない」(p.241)。飯塚事件の刑務官は,いま、何を思うだろう。「もしもあなたが死刑はあって当たり前だと思うのなら、本当はこのスイッチを、刑務官にばかり押しつけないで、あなたも押すべきなのだ」。私には押せないし、だからこそ、その可能性のある裁判員になどなるつもりはない
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