『冤罪法廷 ~特捜検察の落日~』、10月に読了。魚住昭、講談社。2010年9月、第1刷発行。
とても面白く読みました。そして、その杜撰な起訴に呆れました。
本の帯から、「「そもそもこの事件は壮大な虚構ではないか」/ありえない面会日時、矛盾だらけの動機、作られた検事調書・・・・・・/法廷で裁かれたのは被告人の「起訴事実」ではなく、検察の「不当捜査」だった。/緊急出版/「最強の捜査機関」崩壊の瞬間!」。この宣伝文句は、決してオーバーではない。壮大な冤罪。
弘中惇一郎弁護士(p.3)。「「結論その1.検察ストーリーの不合理性!」/こんな出だしの最終弁論は日本の裁判史上初めてに違いない。/・・・なんの違和感も抱かなかったはずだ。「検察ストーリー」のデタラメさをこれまでの審理で嫌と言うほど見せつけられてきたからである」。
安部英氏や三浦和義氏の無罪を勝ち取る(p.4)。ロス疑惑(p.17)。郡司ファイル(p.31)。
安部氏の件では、「NEWS23」にも限界が(p.34)。
「疑わしきは被告人の利益に」という大原則(p.16)。「検察側が強制捜査権という武器を持っているため圧倒的に有利な立場にあるが、その当事者間の格差を是正する」ため。裁判所には「中立公正な判断」、検察官には「徹底した真実追究の精神」が求められる。「法曹三者のうち唯一国家組織に属さない」弁護士には、「どこまでも被告人の利益を擁護し、不当な国家権力の行使に異議を唱える在野精神」が必要。「法曹三者がそれぞれの役割を十分に果たして初めて民主主義の法システムはバランスよく機能する」。弁護士の剛腕ぶりがあって、奇跡的に裁判所がマトモに機能したわけですが、検察が酷過ぎたことも事実。
最高裁が2007年12月に「取り調べメモ」を証拠開示の対象にしたにもかかわらず、弘中氏の要求に「検察側から「すでに廃棄した」という返答」(p.62、207、232、249、267)。「もともと・・・大阪の弁護士たちから「ホトケの横田」と言われるほど、人権感覚の強い裁判長」であったが、裁判官も呆れた模様。
「事実をありのままに見るのではなく、検察にとって都合のいいストーリーに事実の断片をあてはめていく。それでも証拠が足りなければ、法律を拡大解釈する。・・・ムネオ疑獄・・・。/・・・。/・・・こんな犯罪性のかけらもない容疑事実で逮捕されるのなら、公務員はみな逮捕の恐怖に脅えなくてはならなくなる」(p.139)。国策捜査。小沢一郎氏についての検察の暴走(pp.142-157)。安田好弘弁護士(p.150)。「多くのメディアが検察に同調して小沢・石川攻撃を繰り返した。/・・・特捜の歴史始まって以来の大失敗に終わった・・・」。
特捜検察の歴史。大逆事件(p.124)。「思想弾圧に猛威」(p.126)。江副浩正氏と宗像紀夫氏(p.132)。
三井環氏の裏金問題口封じ(p.134)とマスコミのだんまり。
日本赤軍とダッカ事件(p.199)。石井一議員が関係者だったとは驚き!
「第6章 決定打」。その杜撰さに驚くやら、あきれるやら。郷原信郎さん(p.206)。参考人を暴行した「金沢事件」(p.207)。
「第7章 裁判官の詰問」という異例の経過、異様な光景(p.226)。「キャビネットと衝立」による不可能を見てきたように検察が作文、捏造、調書化(p.214)。議員案件という虚構、ダメ押し(p.222)。
「この日、大阪地検も大阪高検も、そしてその報告を東京で受けた最高検の幹部たちも事態の深刻さに震え上がっただろう。裁判所がこれほど特捜の捜査に不審の念を露わにしたのは前代未聞のことだったからである」(p.227)。
村木厚子さんの証言(p.240)。「・・・公務員は国民の願いを法律や制度にしていく翻訳者・・・。/・・・『働くこと』は人間の尊厳にとって、とても大切な問題であり、障害があっても働けることが当たり前の社会にしなければならないと思いました」。「・・・私が公務員として30年間やってきたことの信用をすべて失うかどうかの問題です」(p.253)。
「特捜神話の崩壊」(p.272)。