価値選択(イデオロギー)は、自分を確かにする道(アイデンティティ)を支える、世界に対するイメージを創り出すものでした。
人には、歴史のある時期、自分の人生のある場面で、空気や食べ物を口にしなくてはならないくらい確実に、しかも、強く、新しい、価値選択(イデオロギー)の方向づけ(オリエンテーション)が1つ必要です(その方向付けは、私どもがもっと良いものを創り出すまでそうなのです)。それで、私は、彼の時代にあって最も前向きな言葉を使って、人間の実存の課題に直面した若者に(いつでも、かわいげがある訳ではありませんが)、共感し同情することを恥ずかしいこととは思わないことでしょう。それは私が分析できることを分析しただけであっても、恥ずかしいとは思いません。私は一番単純な意味において、実存という言葉を用いることにします。どの学派も、実存という言葉を独占しているわけではないことをハッキリ意識しています。
価値選択(イデオロギー)による方向づけは、空気やパンと同じくらい、人間が生きていくうえで必須なことが分かります。なぜなら、この価値選択(イデオロギー)による方向づけ(オリエンテーション)が内面化されたものこそ、見当識(オリエンテーション)に他ならないからです。