<バスで>
せとうちバスの停留所を見て思い出しました。
私がまだ学生の時だから40数年前の出来事です。
穏やかな日差しの午後、路線バスに乗っていました。
当時まだバスの利用者が多くて、満席に近い乗客でした。
ある停留所で、私の母方の祖父がよろよろと乗って来ました。
その時祖父は、もう80歳後半の年齢だったと思います。
乗車口の近くにひとりで座っていた私は祖父に気が付いて声を掛けました。
「爺ちゃん、ここ空いてるよ」
すると祖父は嬉しそうにこちらにやって来て、座りながら頭を下げました。
「ご親切にありがとうございます」
あ、祖父は私に気付いていません。
「爺ちゃん僕だよ。爺ちゃんの一番上の孫だよ」と言おうとしましたが止めました。
周りに一杯他人が居る中で祖父に恥をかかせたくなかったこともありますが、何より祖父の笑顔を邪魔したくなかったのです。
その日何があったのか、祖父は私の隣りで、前を見たまま幸せそうに座っていました。
その隣に座っている私も幸せな気持ちが溢れてきました。
祖父は私の視線に気づくことなく、ニコニコと笑みを絶やさず、ずっと前を見て座っていました。
私はそんな祖父を時々横目で見ていました。
祖父が下車します。
私に向かって挨拶しました。
「ありがとうございました」
孫に教えたとおり、親切にされたお礼を言いました。
今日のような温かい夕方の情景です。
その後祖父が93歳で死ぬまで、私が祖父と会うことはありませんでした。
せとうちバスの停留所を見て思い出しました。
私がまだ学生の時だから40数年前の出来事です。
穏やかな日差しの午後、路線バスに乗っていました。
当時まだバスの利用者が多くて、満席に近い乗客でした。
ある停留所で、私の母方の祖父がよろよろと乗って来ました。
その時祖父は、もう80歳後半の年齢だったと思います。
乗車口の近くにひとりで座っていた私は祖父に気が付いて声を掛けました。
「爺ちゃん、ここ空いてるよ」
すると祖父は嬉しそうにこちらにやって来て、座りながら頭を下げました。
「ご親切にありがとうございます」
あ、祖父は私に気付いていません。
「爺ちゃん僕だよ。爺ちゃんの一番上の孫だよ」と言おうとしましたが止めました。
周りに一杯他人が居る中で祖父に恥をかかせたくなかったこともありますが、何より祖父の笑顔を邪魔したくなかったのです。
その日何があったのか、祖父は私の隣りで、前を見たまま幸せそうに座っていました。
その隣に座っている私も幸せな気持ちが溢れてきました。
祖父は私の視線に気づくことなく、ニコニコと笑みを絶やさず、ずっと前を見て座っていました。
私はそんな祖父を時々横目で見ていました。
祖父が下車します。
私に向かって挨拶しました。
「ありがとうございました」
孫に教えたとおり、親切にされたお礼を言いました。
今日のような温かい夕方の情景です。
その後祖父が93歳で死ぬまで、私が祖父と会うことはありませんでした。