遠い昔と言っても四十年ほど前だが、医局の先輩に「内科と言うのは何もしない科って言われるんだよ」。と昼飯を食べながら教えられたのを憶えている。
色々検査をして、あーでもないこーでもないと議論するばかりで手を出さない内科を皮肉った言葉なのだが、「ああそうだよ、何もしない科だよ」。と開き直りながら、其処から大切な教訓を引き出して注意してくれたのだ。
別に医療に限らないのだが、人は何かの仕事を割り振られ**担当になるとつい余計なことを始めがちなものだ。病気の診療では何もしないで見守るという選択が一番のことが結構ある。若い医師はつい担当医になったから何かしなければと、変えない方がいい薬を変えてみたりしがちなので、黙って見守る選択肢を忘れてはならないと教えて下さったと思う。
ケアマネージャーにも同様の傾向を認める。患者さんの望まれるようにという枕詞を聞くのだが、はてな?Kさんは脳梗塞で寝たきり言語障害があり意思疎通が困難なはずなのだがと訝しい気持ちになる場面もある。何かしてあげたいという気持ちはありがたいしよくわかるのだが、そっとしておいて欲しいという場合もあると思う。 熱意溢れる会議では何もしないという意見は不熱心とか冷たいと思われがちだし、医師の意見は重く響いてしまうので何もしない方がとはどうも言い出しにくい。
おまえなあ、先生は不熱心と思われても言わなくちゃという先輩の声が聞こえる気がする。