駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

名前小考

2013年01月13日 | 世の中

     

 苗字は先祖から貰ったもので、有難く頂戴するしかない。しかるに下の名前は親(親族)が付けるので調整が可能だ。予め不快な思いをさせることがあればご容赦願いたいと申し上げておく。苦心惨憺考えるのから三男だから三郎だとか、もうこの辺でと留子などというのもある。名前は個体識別の符牒なのでそれでよいという考えから親の思いが籠っている・・まで色々考え方受け止め方はあると思うが、名前に頼って仕事をしている私のような者には男か女かわかりやすい名前が有難い。

 名前にも流行があるらしく、この頃は女の子でも子が付かず、しかも下の文字が代とか江とか奈・・でない二文字の名前が増えた。男も郎とか雄とか太・・で終わらないのが増えた。尤も、内科では中高年が多いからこうした名前で戸惑うことは殆どない。一文字で男でも女でも使う文字(薫、忍、敏、恵・・・)の時は判断が付かず困る。しかしどういうものか、必ずどちらかでイメージが形成されるので・・・さんと呼んで現れた人が思い浮かべたのと逆の性だと戸惑う。場合により人違いではと思うこともある。呼ばれたのと違う人が診察室に入ってくることは時々あるからだ。思わず・・・さんですかと確かめると男の場合でも女の場合でも慣れているらしく、男みたいな女みたいな名前を付けられたものでと、ちょっと憮然とされることが多い。

 なぜ名前で性の識別にこだわるかというと、初診など性と年齢を見ただけである程度病気を無意識のうちに羅列しているからだ。というよりはあり得ない病気を除外してしまうという方が正確かも知れない。性別をもっと分かり易いところ表記すれば良かったのだろうが、患者が溢れて忙しいと僅か五秒十秒の性別表記を見る手間を省いてしまう。そんなことがあるかと思われる、あるいはそんなことでは駄目とお叱りを受けるかも知れないが、冬の忙しい時期はフルネームで呼ぶのさえもどかしく、**さんと苗字だけで呼んでしまうくらい急いでしまう。というのは診察の時間を短くするのには限界があり、時間の掛かる入れ替えを短縮しようとするからだ。賢いT先生はドア一枚で行き来できる診察室を二つ作り、自分が交互に二つの診察室を行き来して診察している。そうすれば倍とは行かないが三、四割増しの患者さんを診ることが出来るそうだ。私の所はそんなスペースはないし、そこまでしてとも思わなかった。

 中島みゆきに女子の名前を連発する歌があるが、同じ名前でも、聞く人に依り受ける抱くイメージは微妙に異なるだろう。名前というのは大切で味わい深いものだ。 

 *日本語の発音ではないことだが英語では非常に似た発音で性が違うことがある。ご主人が奥に向かって「ジョーン」。と呼ぶ、あれ息子か犬かと思うと美しい奥さんが出て来てびっくり。

コメント (2)
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