駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

昭和史に学ぶ

2013年01月05日 | 

    

 藤一利さんの「日本型リーダーはなぜ失敗するのか」(文春文庫)を読んだ。

 我々の世代、今もそうかな、は昭和史を学校で習っていない。若い時に学ばなかったことは成人してからでは身に付きにくい。昭和の歴史については大筋のことはわかっている積もりだったが、生きた知識があるとは言えず、半藤さんの本を読んで驚き、深刻な失敗なのに考え込む先に呆れてしまった。

 もう十年もすれば、実際に戦争に行ったことのある人は居なくなる。彼等は寡黙だ。もとより、一兵卒が戦争の全貌を知ることはできないのだが、戦後彼等の口は重く傾ける耳は少なく過ぎてきたと思う。私の父も満州の猛烈な寒さを何度も話してくれたが、戦争のことは一度酷いことをしたと呟いたきり何も話さなかった。

 太平洋戦争を間違い失敗と捉えることに抵抗を感じる人達が居るのを知っているが、半藤さんの本をどう読むのだろうか。歴史から学べることは多様で、あるいは違う視点があるかも知れない。しかし、ここに書かれていることに信憑性を覚える、そして現在の日本の状況に酷似しているといささか恐れを感じる。

 決断できない、現場を知らない、責任を取らないリーダーが続いてゆけば、また悲劇が起こるのではと心配になる。リーダーの資質は結局国民の資質を反映していると言われるけれども、歴史に学び情報をつまびらかに知ることができれば自己肥大あるいは視野狭窄の蒙昧なリーダーの暴走をなんとか防ぐことが出来る気がする。半藤さんもそう考えられて、いささかの躊躇を感じながらも踏ん切りを付けてこの本を出されたと思う。

 過ぎた昔の事としてでなく、混迷の今に活路を見出すために読みたい本だ。

コメント
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