やがて皆さんはテレビで肺炎は死亡原因第三位なんですよという放送を見るようになる。これは肺炎球菌ワクチンを接種して肺炎球菌肺炎を予防しましょうという啓蒙を目的としている(勿論、ワクチン製造会社がスポンサー)。
肺炎はしばしば高齢者の命を奪う重篤な病気で、肺炎球菌はその三分の一を占める原因菌である。肺炎球菌による肺炎が防げれば、五千億円という莫大な医療費が節約できるらしい。だからこそ、公費助成が出てきたわけだが、この絡繰りは極めて日本式でややこしい。接種は六十五才からの五才毎の人に生涯一回こっきり方式となっている。例えば今六十六才の人は七十になるまでの四年間待たねばならない。ちなみに肺炎球菌ワクチンは五年間有効とされており、繰り返し打つことが出来る。
勿論、自費で接種することは可能で、右に倣えで人から遅れるのは大嫌いな日本人のことだから65,70,75,80才・・・の人が接種し始めれば、五年間効くなら八千円くらい払おうと自費接種の人が増えるのを見越しているかも知れない。しかしなぜ、全額負担してくれないのだろう。医療費は削減できても年金は増えるわけだからなと恐ろしいことを囁く人も居る。
さて肺炎球菌は普段どこに蟄居しているかというと幼児の鼻の奥が多いという。目に入れても痛くないほど可愛い孫や曾孫を抱いて眼を細めていると、体調不良の爺さん婆さんは肺炎球菌を貰って肺炎になってお終いになる。孫の成長に年を取らされる気がしていたが、まさか可愛い刺客だったとは。
医学はそのことを知り、幼児にも肺炎球菌ワクチンを摂取するようになった。お陰で幼児に住み着いていた肺炎球菌は除去され、爺さん婆さんも安心して抱っこが出来るようになりつつある。