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岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

センダンは・・・芳しくはありません

2023-05-20 17:00:00 | みんなの花図鑑
センダン

「栴檀(センダン)は双葉より芳し」とよく言われますが、このセンダンはそのセンダンではありません。
香るのはインドの栴檀で、たとえば『日本国語大辞典』には「栴檀」は「白檀(びゃくだん)」のこととしています。「白檀」は香の原料の一つですから薫りがあって当然です。ただし、双葉のときはさすがに香らないそうですけど(´v_v`)
インドの栴檀(⇒白檀)
J.M.Garg - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5332574による




一方、日本の「栴檀」は古くは「楝あふち」のことだとされています。
『枕草子』35段「木の花は」に、

木のさまにくげなれど、楝の花、いとをかし。かれがれにさまことに咲きて、かならず五月五日にあふもをかし。

とあって、「かならず五月五日に」咲く花とされています。ただし、香りについての言及はありません。




「5月の青空にかすみがかかったように群がって咲く小さな木の花を見つけたら、立ち止まってしげしげと眺めてみましょう。きっと、それはセンダンです。」(サカタのタネ 園芸通信 東アジア植物記 小杉 波留夫「芳しくはありません センダン」)



「センダンMelia azedarachセンダン科センダン属。種形容語のazedarachは、アゼダラチと発音すべきなのでしょうか、学名には珍しいペルシャ語です。高貴という意味を持ちます。学名から判断してもこの植物が、熱帯域に広く原生することがうかがえます。」(同上)













(2016-07-17)
民家の塀の下とか、電信棒の傍らとか、はては交差点のガードレールの下とか・・・
まるで野菜のトマトのような葉っぱをした植物が勝手に生えてきます。
でもそれはトマトじゃなくてムクドリなどが食べて運んだセンダンなのです。



センダンの葉は若いときには(やわらかいときには)明瞭な鋸歯があります。
「小島・中村 (1986) によるとゴマダラカミキリ幼虫は46種以上の樹木を食べる広食性で,特にカンキツ類とセンダンを好み,カンキツ類の害虫として問題になっている。」(鹿児島大学農学部・津田勝男・坂巻祥考「喜界島におけるゴマダラカミキリ類の(…)“バイオリサ・カミキリ"による防除」)





斑入りセンダン

安城デンパークの斑入りのセンダンです。(コンデジで撮影)



「トネリコに似た涼しげな枝葉が良好な緑陰を作ることから、校庭や街路に使われ、植栽されたものは関東付近でも普通に見られる。」(庭木図鑑 植木ペディア「センダン」)




「センダンの開花は初夏。5月5日に必ず咲くという言い伝えもあるが、実際は地域によって5~6月。」(同上)



「花はその年に伸びた枝葉の基部にまとまって咲くが、たいていは高い場所に咲くため観察しにくく、「雲見草」という別名もある。」(同上)




センダンは成長が極めて早いだけでなく、ケヤキの代替材として流通しているので、材価も高いそうです(熊本県林業研究指導所・横尾 謙一郎「センダンの育成・利用と経済性」pdf)





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