花のたより☆山のふみ~青森県立名久井農業高等学校~

農業と環境の研究グループ「チームフローラフォトニクス」と弟分である「ハンターズ」の取組みを紹介します!

時が止まったまま

2021年04月27日 | 学校
第2農場といえば園芸科学科と環境システム科の温室群が立ち並んでいますが
さらにその奥に足を踏み入れると、初めての方には珍しく
昔の名農を知っている人にとっては懐かしい施設や設備を見ることができます。
さあこのスペースXの発射台のようなものは何でしょう。
かなり大きいものです。名前はベールエレベーター。
ベールとは牛の餌となる干し草を圧縮梱包したもの。
つまりこれは少人数でキューブに梱包された干し草を
トラックなどに積み込むための装置というわけです。
ただ最近は干し草を大きなロールにしてポリシートで
巨大なトイレットペーパーのように梱包する方法が一般的になったので
あまり見ることはなくなったのではないでしょうか。
さてこの酪農で使う農業機械ですが、動物のない名農になぜあるのでしょうか。
実はその昔、名久井農業高校には畜産科があったのです。
学科再編で閉科してしまいましたが、農業動物を学ぶ教材として
10年ほど前まで肉牛を飼育していました。
この農機はそんな時代の遺産なのです。
名農には農業科、生活科、農芸化学科などいろいろな学科がありました。
農場を歩くと名農の歴史、つまり農業の歴史を物語る遺産を見つけられます。
ちょっとしたタイムトラベル。静かな農場に吹く風を感じながら魔を閉じると
当時の様子が蘇ってくるかのようです。
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歴史を語る温室群

2021年04月26日 | 環境システム科
ここは名久井農業高校の第2農場。
園芸科学科の草花部門と環境システム科の温室が所狭しと並んでいます。
先日、久しぶりに天気が良かったので
環境システム科の2年生を案内しました。とはいっても彼らは2年生。
1年生の時、すでにいろいろ見学したと思っていましたが
詳しくは説明を受けていなかったようで、皆さん興味深げに眺めていました。
第2農場に建っているガラス温室は全部で7棟。
サイズも作りもみんな違います。なぜなら目的が全部違うから。
全棟案内しましたが、名農の学科の変遷がよくわかり、
説明したこちらも久しぶりに歴史を思い出すことができ
充実した時間を過ごすことができました。
さて右側手前の温室はハンターズの本拠地である馴化温室。
今年もこの温室でメインの植物研究が行われています。
しかし本来の目的は生物工学で試験管培養したランなどの植物を
外気にならすための温室。フローラ結成時に借用したままもう10数年。
今度こそ返却しなければと思いながら、今年も使わせてもらっています。
その奥の温室はかつての観葉植物温室。
園芸科学科によってバナナなど熱帯植物が育てられていました。
しかし現在は使われていません。なぜなら熱帯植物を育てるには
冬でも温度を確保する必要があります。石油代も高くなりました。
学習とはいえ、収入のあがらない温室の維持が難しくなったことから使われなくなりました。
昭和時代にできた古い温室とはいえ、めったにお目にかかれない石垣壁を持つ重厚な作りです。
「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」とは吉田拓郎氏のメッセージですが
この古い温室も若い名農生のアイデアで新しい活用法を見つけて欲しいものです。
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先輩のおかげです

2021年04月26日 | 研究
ご覧ください。棚にずらりと並んでいる12個の水槽。
水がたった1リットルしか入らない小さなタイプです。
実はこれは熱帯魚のベタを飼育するための水槽で
昨年、世界チャンプになった先輩のトレジャーハンターズが
三和土の耐久性を調査するために15個購入したものです。
面白いことに彼らの先輩であるチームフローラフォトニクスが
世界準グランプリを受賞した研究を進める際も
やはり60cmの水槽を40個以上購入しました。
こんなに水槽買ってどうするのといわれそうですが
60cm水槽は実験が終わった秋に中古品として
文化祭で安く叩き売り。今後の活動費にあてました。
ところが昨年はコロナの感染拡大で文化祭は一般公開なし。
そのためベタ用の小型水槽は販売されることなく倉庫に眠っていたのです。
すると環境班3代目のフローラハンターズのあるメンバーが、
偶然ながらまた水槽を使う実験を計画。
文化祭で販売できなかったことが、今はありがたいと感じます。
さて棚の小型水槽に入っているのは先輩同様、三和土のサンプル。
しかし浸漬したにもかかわらず、ほとんど崩れていません。
これは昨年先輩が浸漬しても崩れない配合比を見出したから。
研究目的が違うため、配合するものが少し変更されていますが
先輩のデータを受け継いでいるので最初から強い三和土を作れるのです。
これもすべて先輩のおかげ。感謝感謝のフローラハンターズです。
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やってみなけりゃわからない

2021年04月25日 | 研究
ハンターズの一人が白い液体を何やら塗っています。
先々週、これと同じ白い液体を和紙に塗っているメンバーがいましたが
それとは似ていますが、まったく別の研究です。
実は彼が塗っているのは透明粘土。
乾くと透明になり固化する特徴があります。
4月に入ってすぐこの研究に取り組んでいましたが
粘土の量が多すぎて思うように固化せず、実験としては失敗。
そこで工夫を加えて再チャレンジしているのです。
粘土を塗っているものはゴム板と金網。
これにハケで上手に塗っています。
おそらく今回は1週間もすれば問題なく固化するはずです。
しかしハードルはこれから。
彼はこの粘土を塗った板を水中に設置したいのです。
でも粘土だから水に溶けてしまうのでしょうか。
はたまた残念ながら板から剥がれてしまうのでしょうか。
答えはNHKの大科学実験のキャッチフレーズ。
つまり「やってみなけりゃわからない」。
誰も知らないことにチャレンジするのはワクワクします。
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カリキュラムに託されたメッセージ

2021年04月25日 | 環境システム科
環境システム科は農と工それぞれの知識技術を学べるユニークな学科です。
初めての方はまったく異なる分野をなぜ2つ設けたんだろうと不思議に思われるはずです。
実はこの学科のコンセプトは最初に施設園芸がベースにあるのです。
今から10年ほど前、都市型の施設園芸や植物工場が注目されていました。
中でも温室の中で環境を制御しながら栽培する水耕栽培の普及は著しいものがあります。
しかし栽培や植物生理の知識はあるけれど、
電気など装置や施設そのものを制御する技術をもつ農業者が少ないという課題がありました。
そこで水耕栽培を主にした施設園芸をまず学んだ後、各自の興味や進路に応じて
さらに栽培や商品開発や販売を極める園芸ビジネス類型と
施設に関わる電気や配管などの工業的技術を極める生産システム類型に分かれるという
全国でも例のないコンセプトが誕生したのです。
したがって農と工がバラバラに活動しているように見えますが、
これはいずれも施設園芸のため。二手に分かれてそれぞれの技術を習得したら
目指すは互いに手を取り合って作る新しい施設園芸。
つまり二つの類型はそもそも同じ基盤から発生しているのです。
類型に分かれても科目「施設園芸」だけは両者学ぶところ、
また3年になると今まで分かれていた両者が手を組んで自分の得意分野を駆使して
水耕栽培経営を実践する科目「起業チャレンジ」に挑むところなど
環境システム科のカリキュラムにこのメッセージが表現されています。
さらに県も賛同し起業チャレンジのため特注の水耕栽培温室も整備されています。
このように「施設園芸」と「起業チャレンジ」は環境システム科の心臓なのです。
しかし学科が誕生してもう8年。設立の理念は当然忘れかけてきます。
生徒も先生も再度、学科新設の目的を意識することで
各科目の学習目的が理解でき励みになると思います。
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