「音楽には、
病む人の心とからだを
癒す力が あります」
~日野原重明(医師)「生きかた上手」~
☆★=☆★
《 解説 日野原重明 》
音楽的才能のあるなしにかかわらず、
人は楽しいとき、悲しいとき、
不安なときに、
音楽によって心を慰められたり、
勇気づけられたりします。
私にとっての音楽もまた、
いまも変わらず、
生きる力を与えてくれるかけがえのない存在です。
"音楽で病が癒える"
カナダのホスピスで、がんの末期の男性が、
「これを歌ってほしい」と、
自分の詩を音楽療法士に見せました。
死んでいくさみしい思いを、
夏の終わりに咲く季節最後のバラの花に寄せた詩でした。
音楽療法士は即興でギターを奏で、
節をつけて歌いました。
聴いているうちに男性は涙を流し、
「また明日も歌ってください」と頼みました。
明日、あさって、しあさってと、
まもなく閉じようとする人生に、
なおあらたな希望の光をその男性は見出したわけです。
それは医師にはなしえない癒しの技にほかなりません。
音楽は痛みも軽くしてくれます。
眠れない人が、
睡眠薬に頼らず音楽だけで眠れるようになったり、
人前に出ると声が出ず、
手が震えるという極度の緊張のある人も、
音楽療法で症状を和らげることができます。
薬でも治らなかった病が、
音楽で治るのです。
それは患者さん自身の生きる力が、
音楽によって引き出され、
からだの不具合までも癒すからだと思います。