元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

九州新幹線は必要か?

2008-08-23 06:40:56 | 時事ネタ
 3年後になるのだろうか。九州新幹線が鹿児島中央駅から博多駅まで開通する。そのため博多駅ビルは改築中で、いずれ阪急デパートや東急ハンズ、映画館のT-Joy(東映系)などを伴って賑々しくオープンする予定である。

 私が十代の頃に鹿児島市に住んでいたことは以前述べたが、当時は父親の実家のある福岡市まで特急でおそらくは6時間近くかかっていた。当然、長期の休みの時でないと足を運べない。それが今では鹿児島と八代まで新幹線が部分開通しただけで大幅な時間の短縮が実現できた。これが全線開通すると、熊本市は完全に福岡市への通勤圏になり、鹿児島からも気軽に福岡市へ週末の買い物に出てこられるようになる。・・・・しかし単純に“便利になる、喜ばしい”とは言っていられない現実があるのだ。

 たとえば福岡県の筑後地方の中核都市である久留米市。かつての繁華街は完全なシャッター通りへと変貌している。郊外型のショッピングセンターに客を奪われた結果だ。九州新幹線が完全開通すると、全九州的に同じ事が起きる。仕事も買い物もすべて福岡市へ一極集中。鹿児島市の天文館も、熊本市の下通・上通も、シャッター街になってしまわないと誰が断言できるだろうか。

 新幹線は地方から人と産業を大都市へと吸い上げるストローの役目を果たすのではないか。便利さばかりに気を取られ、気が付けば都市部ばかりが発展して地方が疲弊するシビアな現実だけが横たわる公算は強い。さらに新幹線は在来線を阻害する。着工が取り沙汰されている新幹線長崎ルートだが、これが開通すると佐賀市より西の地区の在来線は不採算路線として冷や飯を食わされる。地域に密着した交通機関が疲弊化すれば、地方の衰退は昂進するだろう。

 同じ事は高速道路にも言える。確かに九州東地区など高速道路が絶対的に必要な地域はある。しかし、高速道路だけ作ればそれでいいとする考え方では、大都市への集中を招くだけで地方の衰退は免れない。

 公共事業は景気対策の柱である。新幹線も高速道路も“財政支出をやらないよりはマシ”という意味では悪いことではない。しかし、ただカネを出せばいいというのは大間違いだ。高速道路よりも地方の国道を整備を、新幹線を引っ張るカネがあれば地方のインフラ整備や災害対策に向けた方が、中長期的には有益ではないのか。地方は地方なりの、利便性は大都市に劣るとしても若者を惹きつけるだけの個性溢れる町作りを推進出来るような、そんな明確なヴィジョンが必要だ。手っ取り早くカネが落ちてくるのを期待するだけの新幹線や高速道路の建設誘導は、将来的に大きな禍根を残すことになる。
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