元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「きみの友だち」

2008-08-28 06:34:32 | 映画の感想(か行)

 困ったことに、メインのストーリーよりも脇のエピソードの方が面白い。現在フリースクールで絵を教えている20歳のヒロインが、取材に来た若いフリーライターと知り合うくだりの間に彼女の過去が描かれるという構成。足の悪い彼女と難病を抱えたかつての友人との交流が中心になるが、これがまったく面白くない。とにかく“語るに落ちる”ような話でしかないのだ。

 今まで山のように作られてきた難病映画のルーティンを、カメラの長回しと引きのショットを多用して、ちょっとクールに撮ってみましたというレベルである。若くして世を去った友人に対するメタファーとして“もこもこ雲”なる言葉が取って付けたように出てくるあたりも脱力ものだ。

 さらに主演女優がヒドい。石橋杏奈という新人を起用しているが、演技パターンも科白回しも完全に一本調子で、まったく画面が弾まない。クローズアップが少ないのでルックスの良さを売り物にするわけにもいかず(まあ、実際良いのかどうかは不明だが ^^;)、どうしてこんな大根がスクリーンの真ん中にいるのか不思議でならない。

 対して、ヒロインの弟をめぐるサブ・プロットは楽しめる。サッカーが上手い彼に対する、幼なじみの級友の微妙な屈託を描く話。サッカー部の万年補欠だった先輩が、何かと下級生にちょっかいを出す話。どちらも揺れ動く中学生群像をけっこう的確に捉えていて微笑ましい。重松清の原作は未読だが、たぶん作品の雰囲気は上手く再現されているのだろう。ヒロインと同じクラスの女生徒が友人に彼氏が出来たことにショックを受けて視力障害に陥ってしまう話も、少なくともメイン・プロットより数段興味深かった。

 いっそのこと中心になる難病ネタをエピソードの一つにしてしまい、20歳になった彼女も登場させず、各々のエピソードごとに短編映画形式にして、全体をオムニバス映画に仕上げた方が良かったのではないか。廣木隆一の演出に特筆できるようなものはない。まあ、この監督の力量としてはこんなものだ。

 主演の石橋(およびフリーライター役の福士誠治)には用はないが、脇の俳優は粒が揃っている。難病を抱えた生徒を演じる北浦愛の柔らかい雰囲気、弟役の森田直幸は相変わらず達者な演技、先輩に扮する柄本時生のやさぐれた風情も見逃せない。そして同級生女子役の吉高由里子は非常にヤバそうなオーラを周囲に撒き散らしていて出色だ。蜷川幸雄監督の「蛇とピアス」は観る予定はなかったが、彼女が主演しているので急遽“鑑賞予定リスト”に入れてしまった(笑)。なお、使用楽曲は(ラストの一青窈のナンバーを除いて)なかなか良い。サントラ盤はオススメかもしれない。
コメント
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