(原題:The Forbidden Kingdom )万全の作品とはとても言えないが、捨てがたい魅力はある。ジャッキー・チェンとジェット・リー(昔からの映画ファンならばリー・リンチェイという名前の方がピンと来る)との初めての共演作。当然期待は高まる・・・・と言いたいのだが、残念ながら二人ともすでにオッサンである。もちろん同世代の一般人とは比べものにならないほど強いのだが、かつてのような身体のキレは望むべくもない。よっていきおいCGとワイヤー・アクションに頼らざるを得ないのだ。
しかも、アクション監督を務めるユエン・ウーピンはフィジカル面での追い込みよりも特殊効果に御執心のようで、わざわざこの二人に御登場願わなくても撮れるような絵ばかり並べている。さらに、主人公は両巨匠のどちらでもなく、現代のボストンから古代中国へタイムスリップしてきた若造(マイケル・アンガラーノ)だというのだから脱力する。
だいたい、なんで古代を舞台にしたファンタジーにしなければならないのか。たぶん最近ファンタジーものが流行っているハリウッドのトレンドに乗っかったのだろうが、そういうSFXの多用が当然とされるようなネタにこの二人を起用する意味があったのか。単純なポリス・アクションあたりで思う存分活劇の醍醐味を見せて欲しかった気がする。
しかし、それでも本作が憎めないのは二人が過去に演じたキャラクターへのオマージュが散見されるからだ。リー・リンチェイの出で立ちは「少林寺」や「ワンチャイ」などのシリーズの主人公と通じるものがあるし、ジャッキー・チェンは久々に“酔拳”を披露すると共に、かつて映画の中でシゴかれた老師匠の役柄を今回は自身が演じて若手を鍛える側に回っているあたりは感慨深い。
そして嬉しいことに女優陣も上玉が揃っている。ヒロイン役のリウ・イーフェイは終盤の舞台が現代へと戻った時点では大したことはないが(笑)、時代劇コスチュームに身を包むと実にスクリーン映えする。チャン・ユアン監督「ただいま」でのボーイッシュな制服姿が印象的だった敵役のリー・ビンビンも今回は硬質な美貌に磨きがかかっている。
ロブ・ミンコフの演出は平板でストーリー展開も凝ったところは見当たらないが、逆に言えば大きく破綻しているところもない。クンフー映画の全盛時を知るファンがノスタルジー気分で観るにはいい映画だと思う。