元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」

2010-06-10 06:55:46 | 映画の感想(は行)

 (原題:PRINCE OF PERSIA:THE SANDS OF TIME)随分と雑な作りだと思ったら、テレビゲームの映画化らしい。もっとも、ゲームを映画にしてはイケナイという決まりはない。面白く作ってもらえば、元ネタが何であろうと関係ない。しかし本作は、ゲームの悪いところを作劇の中心に据えているという点で実に感心しない。それは“何度でもやり直しが利く”というモチーフである。

 古代ペルシアを舞台に賑々しく展開するのは、時間を巻き戻す機能を持つという“時間の砂”の争奪戦。当初は数分間の遡及能力しかないことが示されるが、その“製造元”の中心地に行けば無制限に時間を元に戻すことが出来るらしい。ハッキリ言ってこれは“反則”だろう。どんな紆余曲折があろうとも、この“時間の砂”を使えば一気にチャラにすることが可能だ。作劇面から限りなく緊張感を奪う結果にしかならない。あくまでも数分間だけ遡れることをプロットの一つにするべきだった。

 しかも呆れることに、悪役の目的は自身の権力欲を満たすことだったりする。その程度のことならば“時間の砂”みたいなオカルトグッズを使わずとも、権謀術数で何とかなるはずだ。斯様に敵役が知恵の回らない奴ならば、主人公達の奮闘も何やら空しくなってくる。

 アクション場面は金が掛かっていて派手だが、あまり盛り上がらないのは“どこかで観たような画面展開”のように思われるからだ。つまりは段取りが上手くない。監督のマイク・ニューウェルは過去に「魅せられて四月」や「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」といった佳作をモノにしているが、元々はお手軽三流活劇の作り手であり、今回は自己のルーツに戻ったような不甲斐なさだ。

 主演のジェイク・ギレンホールは、肉体改造までして頑張ってはいるのは認める。しかし、彼の面構えは時代劇向けではないのだ。他の出演者も(ベン・キングスレーを除いて)サマにならない面々ばかり。特にヒドいのがヒロイン役のジェマ・アータートンで、全然美人ではないのに加え、品がなくて存在感も限りなく小さい。まるで場違いであり、キャスティング・ディレクターに猛省を促したい。

 それにしても、事の発端である聖地アラムート侵攻のいきさつが、あまりにイラク戦争と似ているのには苦笑した。不法な武器輸出をしているという疑いだけで戦争を仕掛けるのは、大量破壊兵器の存在があると言い張ってイラク侵攻を強行した米軍と一緒だ。もちろん、このネタは本作においては取って付けたようであり、作品の質の向上に一切寄与していない。たぶん“思い付き”のレベルなのだろう。
コメント
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