元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダブル・ミッション」

2010-06-25 06:44:26 | 映画の感想(た行)

 (原題:THE SPY NEXT DOOR )非常にユルい作品だが(笑)、個人的にはけっこう楽しめた。ジャッキー・チェンのハリウッド進出30周年記念作という触れ込みのスパイ活劇コメディ。彼がアメリカでも仕事を始めてもうそんなに経つのかと、まずそのことに驚いてしまう。

 考えてみれば数々の快作をモノにした香港での活動に比べて、肉体アクションの扱い方を知らないハリウッドの方法論とは相性が良好とは言い難く、煮え切らない作品ばかり連発して、結果アメリカでの仕事ぶりが印象付けられないまま現在に至っているのが実状だろう。だから“30周年オメデトウ”と言われてもまるで合点が行かないのだ。

 で、本作はその逆境を克服しているようなヴォルテージの高い映画かというと、決してそうではない(爆)。むしろジャッキーのアメリカ作品の中では、最もお手軽な作りだと言える。ところがこれが他愛が無くて面白い。これはひとえに“身の程を知った”ということではないだろうか。

 どうせハリウッドでは、活劇映画で肉体の限界を示すよりも適当なところで特殊効果に頼る方が“合理的だ”と思われているので、身を削って頑張るよりも自らの陽性なキャラクターを活かしたライトな役柄をこなす方が得策だ・・・・と悟ったのではないか。今回は一応アクション映画の体裁を取っているが、今後は活劇を抑えた“気の良い中国系のオッサン”という役回りでアメリカ映画に出ることが多くなるのかもしれない。

 さて、本作はCIAに出向している中国情報部のエージェントが、ロシアン・マフィアと究極的な生物兵器の争奪戦を演じるという設定のシャシンだ。しかし、舞台がニューメキシコ州の田舎町で、主人公が立ち回りを演じる場所も自宅とその近所という、実にミニマムな作りである。それがあまり安っぽくならないのは、彼がスパイであると同時に平凡なセールスマンとしての“表の顔”を持っており、隣家のシングルマザーと恋愛中という小市民的な面を補完する役割を果たすからだ。これがたとえば“表の顔”がマンハッタンのビジネスマンで複数のキャリアウーマンとよろしくやっているとしたら、嘘っぽくて観ていられないだろう。

 ジャッキーと3人の子供達との触れ合い、とりわけ前夫の子で母親と血が繋がっていない長女の屈託を解してやるくだりは、彼の柔らかい個性が出ていて納得出来る。アクションシーンはさすがに若い頃のような切れ味には欠けるが、段取りが上手くて飽きさせない。ヒロイン役のアンバー・ヴァレッタと長女に扮するマデリン・キャロルもイイ味を出している。

 それにしても、アメリカと中国が情報部員の人材交流をするほど仲が良くなり、敵対するのがロシアだというのは(いくらフィクションだとはいえ)愉快ならざる気分になる。ロシアの代わりにEUとか日本とかを想定してもいいのだが、とにかく昨今のG2体制で世界を牛耳ろうとする風潮には、何やらキナ臭いものを感じてしまう私である(^^;)。
コメント
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