オルゴールの音で目が覚めました。
朝の7時すぎ。
(夜明けが遅いのと、寒いので、このごろ朝寝坊です)
「なに、あの音?」とMが言う。
「んん? オルゴール…」
音がゆっくりゆっくりになり、止まる。
それっきり聞こえない。
「え? どこ? 何が鳴ったの?」
目覚まし時計はオルゴール音ではありません。
寝ている部屋ではない、家のどこかで鳴ったのです。
でも、どこだか、わからない。
ゆっくりになって止まった、ということは、
電子音じゃなく手巻きの機械式オルゴール。
つまりタイマーで鳴るはずはないので、
誰かがねじを巻いたということになりますが、
ヒトは寝てたし、猫にはねじは巻けない。
そもそも、オルゴールなんてそこらに置いてませんし。
誰か…いるのでしょうか?
ふたりして首をかしげながら朝ごはんを食べる。
洗濯をしながら、ふとその音を思い出す。
かろうじて耳に残っているのは最後の3~4小節。
止まる寸前で、ばらばらの音だったけれど、
あれはワルツ、長調、そして…
「舞踏への招待」だ!
それなら、ひとつ持っていました。
もう30年くらい前にもらったピエロのオルゴール。
ガラス戸棚の奥から取り出し、カリカリとねじを巻いてみました。
ああ、たしかに、この音です。
よく響くオルゴールなので、戸棚の中で鳴っても、
周囲が静かなら2階でかすかに聞こえます。
でも、どうしてひとりでに鳴ったのだろう。
スイッチはなくて、巻いたねじが戻りきれば鳴り止むという
ごくごく単純な構造のオルゴールなのに。
子どもが小さかったとき、何度か出して遊んだ記憶があるけれど、
そのあとは、ずっと手も触れず忘れていました。
「誰にもらったの?」とMが聞く。
「えーっとねえ…」
すみません。どうしても思い出せません。
「その人が、何か言いたかったのかもよ」
「ええええーっ?」
「書いとけば? ファンタジーになるかホラーになるか」
とMが言うので、とりあえず書いておきます。
でもホラーじゃないほうがいいなあ。