閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

ほろほろ

2010-02-11 16:13:51 | 日々
雨の午後。
古い子ども用のピアノ曲集をひっぱりだし、
片っ端から弾いてみる。

一番古い本が、ええと、昭和27年。
え? 生まれる前ですよ、もちろん(笑)。
さすがにすっかり変色して、背表紙もはがれ、
うっかりめくるとぼろぼろ崩れそうだ。
誰かのお古、のお古、のお古をもらったらしい。
「ABCの歌」から始まって、最後が「紡ぎ歌」。
とんてんとんてんと弾く左手が懐かしい。

うちにはオルガンしかなかった。
母はたいして弾けなかったが、
合唱をやっていて楽譜は読めたので、
赤、黄、緑と、色つきの音符でドレミを教わった。
一見同じように鍵盤が並んではいるものの、
オルガンはピアノとはまったく違う楽器だ。
ピアノ曲を弾いてもきれいには聴こえないのだが、
「紡ぎ歌」だけは足踏みオルガンでもそれなりに似合い、
ぶかぶかした音が面白かったのでよく覚えている。

別の本で「人形の夢と目覚め」をみつける。
あ、これもすごく懐かしい。
近所に習っている子が何人かいたから聴きおぼえたのだろう。
大きな真っ黒いピアノの上には、大きなメトロノームと、
なぜか必ずフランス人形も置いてあるのだった。
「エリーゼのために」や「乙女の祈り」を弾けるのは
もうすこし年上のお姉さんたちで、おもてで遊んでいると、
どこかの家の窓から聴こえてきたりした。

そういう、具体的なタイトルがついていて、
お話を読むように「読める」曲が好きだったと思う。
ガボットとかメヌエットとかいう古典舞曲は、
どうにもイメージが湧かなくてつまらなかった。
そうか!とわかったのは、ずうっとあとになってから…
たぶん映画「仮面の男」の宮廷舞踏会のシーンを観てから。
華やかな重たいドレスのすそが、音楽に合わせて
いっせいにくるりと回る、あの感じ…。

人見知りするたちだったので、楽器に限らず、
習いに行くと、その緊張感だけでいっぱいになってしまい、
楽しかったという記憶があまりない。
習わなければ上達しないけれど、いまはこれで楽しい。
いつまでたっても初級用の曲ばかりほろほろ弾いている。
三つ四つの音の組み合わせから、こんな響きがうまれるのかと、
万華鏡をのぞくような驚きで、それを聴く。

シューマンのユーゲントアルバムをつまみ弾きして、
湯山さんの「甘納豆」にたどりついたところで、
ちょうどお茶の時間になりました。
コメント
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