グリムの白雪姫の話。
悪いお妃がこしらえた毒りんごは半分が赤く、半分が白く、
赤いほうにだけ毒が仕込んである。
この「半分白」という表現が、どうもひっかかっていた。
白いりんごって、見たことがない。
熟していないりんごは、たしかに赤くはないが、
それは日本語では「青い」と言うのではないかしら。
さらに、その「半分」というのが、「縦に半分」だと、
なぜかわたしは子どもの頃から思い込んでいた。
お妃が「2つに切って一方を」食べさせるせいもある。
りんごを2つに切るといったら、ふつうは縦ですよね。
しかし、左右に紅白染め分けのりんごというのは、
想像すると、いささか変である。
りんごに見えない。
ドイツ語の原書が読めないため、英訳本を仔細に読む。
すると、英文でもwhiteとredと書いてある。
白くて頬の赤いりんご、と。
(グリムを読むことになるならドイツ語をやっておくべきだった。
ルパンと三銃士が読めればとフランス語をとったのが大間違いで、
結局、ぜんぜん読めるようになりませんでしたし・・)
白雪姫の「雪のように白く、血のように赤い」に
かさねたwhiteとredであることはわかる。
しかし、この場合の白は、「白という色」よりも、
「色が薄い」「色づいていない」と解釈すべきだろう。
日本語で単純に「赤と白」と言ってしまうと微妙に誤解が生じる。
りんごの赤く色づいたところと、未熟な色の薄いところ。
って、ふつうに考えれば、上と下ですね。
すると、お妃は、横半分に切ったんだろうか。
想像すると、それも、なんだか変だけど。
<追記>
このつづきは →こちらです。
それにしても、仔細に読めば読むほど、
このお妃の執念の凄まじさには驚く。
変装して、7つの山を越えて、はるばる殺しにやってくる。
コムスメ相手に、3度も。
ほとんど「ターミネーター」並みである。
この人に比べれば、王子さまなんて、ぜんぜん影が薄い。
白雪姫の物語が時代を超えて語り継がれてきたのは、
やっぱり、悪役がいいから、でしょうね。
英国版アーサー・ラッカムの絵は小人も怖いのよ;
以下は、おまけ。
<白雪姫と7人の宇宙人>
白雪姫のゆめは、スターになることでした。
だいすきなポップス歌手のハンク・ハンクみたいに、
ヒットチャート1位になりたいと思っていました。
白雪姫は、きれいな声をしていました。
おどりもじょうずでした。じぶんで歌をつくることもできました。
もんだいは、ただひとつ――いじわるなまま母でした。
まま母は、むかし、ゆうめいなスターでした。
ワルイ・オキサキというなまえで、人気まじょバンドの
リードボーカルをやっていました。
でも、いまは声もしゃがれてしまい、もうスターではありません。
それで、白雪姫のことをひどくねたんでいたのです。
・・というのは、Laurence Anholtという人の書いた
昔話パロディ集で、10年以上前に頼まれて訳したものの、
刊行に至らなかった幻の1冊。
このあと、白雪姫は、まま母から逃げ出して、
<ナイトクラブ・宇宙船>の掃除係になるのですが・・。
他にも「おおかみずきんちゃん」とか「ジャックと豆の缶」とか
「はだかじゃない王様」とか、いろいろ変なのが入ってて、
面白いですよ。