水面を破壊せよ、上へ昇って

勢いよく水面を破壊する気概で、海面に湧く言葉たちであれ。

『想像ラジオ』 メモ

2016年09月09日 23時57分39秒 | 震災メモ
 ラジオ という媒体の自由さ。それぞれの好みに、寄り添うように流れる番組。霊的なもの、それは電波。脳波を読み取るのも不可能ではない世の中になってきた。ラジオ番組を、やっている。よっちの詩を紹介。私たちは、生者だが、死者の側のラジオがこの小説の主題となっている。生者も、死者もラジオが大好き。ちょっとしたレトロ感が、ラジオには感じられる。テレビに較べて、安心感を覚える。束縛が少ない。自由度が高まる。音声だけの放送で、逆に想像力が掻き立てられる。つまり、そういう意味もあって、作者は想像ラジオと名付けたのではないだろうか?
 想像ひとつでラジオが放送できる、と。人間は、体からなんらかの電磁波を発しているという。それらは、無ではない。ただ、私たちの目に見えないだけである。目に見えないものが、大切だ! と、誰かが言った。サン=テグジュペリの小説のなかの人物だったか? 実際に、カスタマイズして想像ラジオ内の曲のコーナーで聴けるという設定になっている。人間は、見たいものを見、聞きたいものを聞くのだ。つまり、どこを切り取るか、また、何を選ぶのか?人生は、選択によって形作られるものだ。小説は、人間の心を代弁する装置だ。小説が、そもそも、人々が選択して出会うような代物で、また、それを読まない人にとっては、その作品はこの世に無いに等しいものだ。そして、文字だけというのも、人々に想像させるものだ。つまり、この作品は、目だけの情報のなかに耳だけの情報を潜ませ、ちょうど、人間の感覚器官から得る情報の割合の高い情報から、徐々に掘り下げさせて、読者を深い海のような場所へと沈潜させ、そして内容理解と共に電波と化させるがごとく、浮上させて空の上を翔け回らせるという仕掛けこそ、この小説の真骨頂だ。

 岡本太郎の対極主義。 反‐弁証法

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