あの日、僕の脳内のハードディスクに
終生忘れることのないだろう光景が
しかと焼き付けられた
小高い丘に立って
僕は歴史の動く瞬間を目の当たりにして
あっけに取られていた
我が家の目の前には
いつもはとても穏やかに流れる
「大川」と呼ばれる河があった
だがその日は
いつもと変わらぬ
何気ない光景が
そこには
なかった
歴史の大きな歯車が
動き出していくのを
僕は恐れて
声にもならぬ呻きを上げるしかなかった
僕と祖母は
茫然と立ち尽くした
雪はいつの間にやら舞い始めていた
目の前の河は真っ黒な濁流となって
今にも橋ゲタを破壊してしまいそうに
約二十分以上も逆流して
それからゆっくりとまた元の方向へと
流れは戻っていった
その間の時間の進みの
遅さと言ったらなかった
静かに、雪は舞っている
僕らは静かに、今でもあの人たちの帰りを、
待っている、ただ空洞のような心を抱え。
雪よ……
なぜ、今、降ることを選んだのか?
この日の雪の禍々しさは
他のどんな日のものとも比ではなかった。
雪よ! いったいどうして、今この時を選んで残酷に舞っているというのか?
あの日の僕の脳内のハードディスクには
不自然にも真っ黒な色をして逆流した河と
ねずみ色の大気の中を舞う灰雪の影とが
哀しくも強烈な記録としてしっかと刻まれた
雪は、舞っている。あの人たちの帰りを
待っている僕らを包むように。いつの日に
かまた会えるものと想うのは、おかしいこ
とですか? 何年経ってもいつかは誰もが、
遥か彼方へ逝くことになる国の様子を思
い返すように、あの日の再生ボタンを押すのだろう
終生忘れることのないだろう光景が
しかと焼き付けられた
小高い丘に立って
僕は歴史の動く瞬間を目の当たりにして
あっけに取られていた
我が家の目の前には
いつもはとても穏やかに流れる
「大川」と呼ばれる河があった
だがその日は
いつもと変わらぬ
何気ない光景が
そこには
なかった
歴史の大きな歯車が
動き出していくのを
僕は恐れて
声にもならぬ呻きを上げるしかなかった
僕と祖母は
茫然と立ち尽くした
雪はいつの間にやら舞い始めていた
目の前の河は真っ黒な濁流となって
今にも橋ゲタを破壊してしまいそうに
約二十分以上も逆流して
それからゆっくりとまた元の方向へと
流れは戻っていった
その間の時間の進みの
遅さと言ったらなかった
静かに、雪は舞っている
僕らは静かに、今でもあの人たちの帰りを、
待っている、ただ空洞のような心を抱え。
雪よ……
なぜ、今、降ることを選んだのか?
この日の雪の禍々しさは
他のどんな日のものとも比ではなかった。
雪よ! いったいどうして、今この時を選んで残酷に舞っているというのか?
あの日の僕の脳内のハードディスクには
不自然にも真っ黒な色をして逆流した河と
ねずみ色の大気の中を舞う灰雪の影とが
哀しくも強烈な記録としてしっかと刻まれた
雪は、舞っている。あの人たちの帰りを
待っている僕らを包むように。いつの日に
かまた会えるものと想うのは、おかしいこ
とですか? 何年経ってもいつかは誰もが、
遥か彼方へ逝くことになる国の様子を思
い返すように、あの日の再生ボタンを押すのだろう
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