水面を破壊せよ、上へ昇って

勢いよく水面を破壊する気概で、海面に湧く言葉たちであれ。

鍵のかかった言葉

2021年04月23日 21時00分24秒 | 現代小咄

 言葉にロックをしてしまい

 錠が開かなくなった夜

 言葉の旨みもつゆ知らず

 駆けだす脳内暴走列車

 それは銀河も跨がず

 ただ無明の波に揺れる

 

 化けの皮をはいだら

 そこには虚しさがあった

 

 ああ あそこに想いがある

 開くことのなかった想いがある

 言葉として選ばれなかった感情がある

 高尚なフランス文学でさえ届かなかった想いがある

 高尚だと言われたいのか

 どうなんだ?

 

 鍵のかかった言葉は要らない

 開けて 開けて 限りなく開かれる本質が言葉の鍵

 自己快楽ではない言葉の並びを手に取るように

 選び取るように

 生半可な自己快楽を超えたほんとうの自己快楽を

 胸に思い描いて

 

 溢れ出た言葉は生もので

 ついに箸に掴まれることとなった

 そのまま口に運んでゴックリと

 

 繋がる手

 ふいに訪れた朝

 思いもがけず湛えた涙が目にしみる


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