2月3日の節分は、家長である
おじいちゃんの出番です。
お父さんは2人の子どもを儲け、立派に家庭を築いていても、世間的にはまだまだ若造です。(そして、お父さんはこの時期まだ、帰ってはいませんでした。)
何と言っても、おじいちゃんが世帯主、一家の主でした。
夕方まだ明るいうちに、おじいちゃんは豆がらとヒイラギの葉っぱ、丸干しいわしの頭を刺した小枝を玄関の柱へ刺して、飾ります。
豆がらとヒイラギの葉はトゲトゲしていて鬼が嫌がり、いわしの頭は臭い匂いに鬼が家の中に入ってこられないからだとおばあちゃんが教えてくれました。
お母さんは、ほうろく(本物は土器製らしいのですが、チエちゃん家では薄くて小型のフライパン様の金物で、豆、ゴマなどを炒るための道具のことをこう呼んでいた)で、大豆を炒ります。
大豆の香ばしい匂いがします。
夕方、薄暗くなる頃に、炒り豆を大きな枡に入れたおじいちゃんは神棚にお供えして拝んだあとに、2階の部屋から豆まきを始めます。
チエちゃんとたかひろ君もおじいちゃんの後について、一緒に豆まきをしたものでした。
部屋の中に向かって、
「福は~、うち」、開け放った窓から外へ向かって、
「鬼は~、そと」 勢いよく豆を撒いていきます。
おじいちゃんの声は、隣近所中に聞こえそうな程の大声です。
チエちゃんたちは、初めの頃は恥ずかしくて、小さな声で「福は~うち、鬼は~そと」、豆の撒き方にも勢いがありません。
1階に廻ってくる頃になると、だんだんに慣れてきて、おじいちゃんに負けじと大きな声を出し始めます。
豆まきが終わった後、コタツに入り、豆を食べながら、おばあちゃんがまた教えてくれます。
自分の年の数の豆を食べれば、一年間病気をしないで過ごすことができると言うことです。
チエちゃんは10個ぐらい食べればよいのですが、入れ歯のおじいちゃんとおばあちゃんはこんなに固い豆を70数個も食べられるのかなあとちょっと心配なチエちゃんでした。
七草粥といい、豆まきといい、昔は事あるごとに無病息災を祈っていたのですね。