チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第42話 和光堂

2007年02月22日 | チエちゃん
 学校の近くには子ども相手の文房具屋さんや駄菓子屋さんがあったものです。今回は、文房具屋さんのお話です。

 チエちゃんが通う小学校の近くにも文房具屋さんがありました。
屋号を「和光堂(ワコウドウ)」と言いました。
 チエちゃんは、学校で必要な文房具類をほとんどこのお店で購入していました。

 ノート、えんぴつ、消しゴム、三角定規、分度器、コンパス、12色の色えんぴつ、クレパス、絵の具、習字筆、墨汁、習字半紙、工作用紙、竹ひご、木工ボンド、折り紙、・・・・・

 なかでも、消しゴム。チエちゃんは消しゴムを最後まで使ったことがありません。新しい物を買うたび、「よし、今度こそ最後まで使うぞ!」と思うのですが、どの消しゴムも文字通り、いつの間にか消えてなくなるのでした。おそらく、何処かへ置き忘れるか、コロコロ転がって紛失してしまうかのどちらかなのです。
或いは、和光堂に売っているオレンジやピンクでよい香りのする消しゴム欲しさに無駄に使ってみたり、小刀で小さく切って遊びに使ってしまったりするのでした。

 また、絵の具はセット物を売っていたのですが、バラ売りもしてくれました。
特に「白」絵の具。「白」は他の色と混ぜて、赤+白→ピンク、青+白→水色のように使うのですぐに減ってしまいます。大チューブ入りのものをよく買ったものでした。

 そして、そして、チエちゃんは週に1度は必ず、和光堂に寄り道をしました。
それは、和光堂が村でたった1軒の本屋さんでもあったからです。
少女マンガも、少年マンガも、ここで買っていたのです。

 ただ、マンガ本を買うだけではありません。購入できるのは1冊だけですから、あとは立ち読みをすることになります。少女フレンドを買うときはマーガレットを、マーガレットを買うときは少女フレンドをという具合です。

 和光堂のおばさんは美人で、おまけにチエちゃんがずーっと立ち読みをしていても何も言わない良い人でした。
 ところが、おじさんはいけ好かないヤツです。
10分も過ぎると「買うの?買わないの?買わないんなら、立ち読みはお断りだよ」と言って、チエちゃんを睨むのでした。

 でも、ホントはおじさんの言うことが正しいんだと、チエちゃんも分かっているのでした。