高度情報化社会においては、限りなく透明性が進展すると同時に、氾濫する情報の価値を見極める能力が大切な要素。これは、情報の送り手の見識やモラルによるところが大だが、情報の受け手側にも真偽を見抜く能力が必要だ。
1991年1月、国連の多国籍軍がイラクを空爆した際、我々は、お茶の間に居ながらにして戦争をリアルタイムで見た。2001年9月、アメリカの同時多発テロでは、旅客機がワールドセンタービルに激突する光景に釘付けになった。国内でも、たてこもり事件や交通事故、或いは、殺人事件の模様を毎日のようにテレビカメラで現地中継する。
話題性と迅速性・正確性は報道の使命だが、反面、人心を惑わすマイナス効果を無視できない。マスコミ関係者は、興味本位ではなく、犯罪の凶暴性や残忍さ、或いは、事故の悲惨さをアピールすることで、事件・事故の抑止につながることを期待していると信じたい。だが、視覚に訴えるメディアは、当事者の想像を絶する影響力を持っていることも真摯に受け止めるべきだ。
カメラは現実に起きている事象をとらえているのだが、テレビ画面を通すとバーチャルの世界のように錯覚する危険性がありはしないか。類似の凶悪事件がこうも起きると、犯罪者の心理異常だけではなく、メディアが創りだす”バーチャルとリアルの混同作用”に不安を感じる。