雨降る中を病院へ向かう足は、いつも以上に重かった。「病は気から」とは良く言ったもので、不安感がストレスを増幅させ、マイナス思考に陥っていた。 近所の小公園に遅咲きのしだれ桜を見つけ、家にとって返した。 カメラに収めながら、「花の命は短くて、、」「風さそう花よりもなお、、」と、次々に暗い詩が浮かび、「逝く春を しみじみ仰ぐ 桜かな」と詠んだ。
先の血液検査で、「CEA」(腫瘍マーカー)に異常値が発見され、消化器系臓器の癌検査を徹底的にしてもらった。昨日、関連する検査項目を全て終え、午後2時過ぎに所見説明を受けた。「大腸ポリープは手術の必要なし」「腎臓の嚢状の異物も無害」「その他臓器も癌の危険性なし」との結論だった。
帰路、もう一度公園に立ち寄った。朝方、気付かなかったが、新緑が色濃くなると桜の紅色が一層際立つ。「世の中に絶えて桜のなかりせば、、」「酒のない国へ行きたい二日酔い また三日目には帰りたくなる」と、落語ネタを思い浮かび、平常心に戻っていた。
~「さまざまの 事思いだす 桜かな」(芭蕉)~平凡だと評されるが、日本人と桜の関わりを平易に詠んだ秀逸な句だ。助詞「の」と「な」の違いに「ひと文字」の奥深さを噛みしめている。