家族シネマ(柳美里著)

2024-06-28 13:07:45 | 読書メモ


「家族なんてどっちにしたってお芝居なんだからね」
羊子(主人公の妹)の言うとおりかもしれません。

それぞれの役割を演じられなくなって崩壊した家族が20年の
ブランクの後、映画撮影のため、また家族を演じてみるのだけど、
(当然のことながら)ズレまくってしまいます。
シナリオが用意されて、小道具が完璧でも、ロケ地を変えてさえ、
家族が家族を演じることができなくなっていました。


この家族、行動も考え方もズレてるし、アンバランスなんだ
よなぁ。
いろいろな思いが頭に噴いてくる作品でした。
家族はしんどい。

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ウェルカム・ホーム!(鷺沢萠著)

2024-06-27 14:17:06 | 読書メモ

ウェルカム・ホーム!(鷺沢萠著)を読みました。

バブルの時代の雰囲気、そしてバブルが弾けた後で少し停滞した
生活の描出の仕方が面白く、あっという間に読了しました。
あの時代に失ったものも多いけど、社会の転換期でもあり男女の役割や
固定観念も崩れ、主夫という言葉も生まれましたよねっ。

鷺沢萌さんが、荒川強啓ディキャッチ(TBSラジオ)に出演された時、
不思議な感覚に囚われたことを覚えています。まさかあのような亡くなり方
をされるとは、思っても見ませんでした。20年前のこと。
ご冥福をお祈りします。


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南洋の日本人町 (平凡社新書)太田 尚樹著

2024-06-24 12:21:32 | 読書メモ

その道の研究者が、当時の地図などをもとに、南洋各地の日本人町を
訪ねる紀行文です。
日本人が海外に移り住み、さまざまな国内外の歴史的要因に翻弄
されながら、日本人町が勃興、消滅していく様子が
、つぶさに
描かれていました。
著者の視点は常に「消えた日本人町、今も栄える中国人街」に
置かれていたようにも思います。
最終章で、その理由らしきものが書かれていたので、簡単に
まとめました。

華僑と日本人とではネットワークの厚みが違う。
すなわち華僑は一族郎党で行動するため家族があるが、日本人は
現地の女性と結婚することが多く、日本人としてのコミュニティ
が維持できず、二世以後は現地に同化していくため、日本人として
のアイデンティティーが失われ、結果として日本人町が消滅した、と。

詳しくは本書をお読みください。


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偶然の点の続き―ブルームに集いて 松平みな (著)

2023-11-13 12:05:08 | 読書メモ
現在夫の実家の家系図作りをしています。
これが物凄く面白い。
曽祖父は安政、高祖父は天保生まれであることがわかり、
期せずして江戸時代まで遡る家系図が
出来上がりました。
市町村合併を繰り返しながらも、過去の除籍謄本を大切に保管し、
交付して下さった、大洲市の担当者にお礼を申しあげます。
 
さらに、豪州西オーストラリア州ブルームで生まれた夫の祖父の
出生届も保存されていることが判明し、このほど豪州から
出生証明書を取り寄せることができました。

こういう背景があって、この本を読んだところ、ぐんぐん引き込まれ
1日で読んでしまいました。
南予から豪州ブルームへ真珠採りに行った先祖を持つ方にはおすすめ
の一冊です。


出版社 愛媛新聞サービスセンター
発売日 2018/9/27
購入価格 990円

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佐伯祐三アトリエ記念館

2022-11-27 14:27:40 | 読書メモ
先日読んだ「夭折の画家 佐伯祐三と妻・米子」(稲葉有著)
がきっかけとなり、新宿区落合にある佐伯祐三アトリエ跡を
訪ねました。
佐伯米子氏が亡くなった後、区が取得し一般公開しているようです。






ガイドの方々の説明は、良かったのですが、施設については、
保存のために手を入れすぎて、歴史的建造物という感じは
なかったです。
 
展示品の中に、祐三と米子の結婚式の写真がありました。
大正9年11月に築地本願寺で挙式しているので、その施設で
撮影されたものでしょうか。


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夭折の画家 佐伯祐三と妻・米子(稲葉有著)

2022-10-22 12:59:56 | 読書メモ

夭折の画家 佐伯祐三と妻・米子(稲葉有著)
 
画家佐伯祐三とその妻米子の関係について書かれた本です。
稲葉氏が資料を丹念に検証した結果、佐伯祐三の作品に米子が
加筆していたのは確かだ、と思いました。
 
「米子ハンが仕上げしてくれはるけどわし自分の画が見えんやふに
なってしもふてそれは さびしゐです は」(佐伯祐三から吉薗周蔵
に宛てた手紙)
 
ただ、佐伯と娘の彌智子の死因については、よくわかりません。
米子が殺鼠剤を買ったことが事実でも、それを盛ったかどうかは
別問題です。
 
本書で一番興味をそそられたのが、佐伯祐三の「スポンサーで
黒幕のような人物」として紹介されている吉薗周蔵のこと。
吉薗は陸軍の諜報活動の任務を与えられ、当時パリに居住している
日本人の活動、とりわけ薩摩治郎八の行動を探っていたらしい。
のちに祐三がパリから吉薗周蔵に送った絵画が自治体を巻き込む
真贋論争に
発展してしまったことも、興味がつのる理由です。

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おもちゃ 河井案里との対話(常井健一著)

2022-10-09 16:22:37 | 読書メモ

おもちゃ 河井案里との対話(常井健一著)
 
河井夫妻選挙違反事件の背景に何があったかよくわかる本です。
宏池会王国広島県にあって、自民党所属の代議士でも越えられない壁が
あるのだと思いました。例えば自由民主党広島県連会長のポスト。
池田、岸田、宮沢家なら求めなくても回って来ますがが、いくら
当選を重ねても克行氏に回って来ることはありませんでした。
もちろん、本人の行状に反省すべき点は多いのだけど、怨念を
募らせた克行氏の心情は理解できます。現在の県連会長は、
寺田稔衆議院議員(妻慶子氏は池田勇人元首相の孫娘)、
前任者は岸田文雄氏、その前は参議院議員の宮沢洋一氏(岸田
首相の従兄弟)とくれば、他の広島県選出の政治家は面白くない
はずです。なんだか私まで河井夫妻がため込んだ”ルサンチマン”に
共感してしまいました。
河井夫妻がやったことは確かに行き過ぎけど、二人が池田、岸田、
宮沢家出身だったら、犯さなくて済む罪だったような気がします。

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尋ね人の時間

2022-09-20 11:53:58 | 読書メモ

尋ね人の時間(新井満著)読了。
 
作品が発表されたのは、バブル経済真っ只中。
高度経済成長を遂げた後、方向性を失って、彷徨っていく日本
の雰囲気が漂っていました。
文章は映像のように流れ、特に第三章の「井戸」は美しかった。
空井戸から紋白蝶のしかばねや色紙が舞い上がってくるシーンには
圧倒されました。
主人公神島の娘・月子は今頃どんな大人になっているんだろね。
レインボーブライドパレードに、つなぎのジーンズを着て参加
しているか、それとも画家になって絵を描いているか。
 
昨年12月新井満さんが亡くなったとニュースで知りました。
若い頃電通神戸支社に勤務されていて、市内の新興住宅地にお住まい
でした。新井さんと同じバスで通学する女子中高生の間では、
「あのカッコいい人はいったい誰だろう」と噂になった程です。
ちょうどその頃でしょうか、新井さんが歌唱したカネボウのCMソング
「ワインカラーのときめき」がヒットして、女子中高生のボルテージは
上がりっぱなしでした。
中学のクラスメートのFさんは、新井さんの家の斜向かいに住んでいて、
新井さんにサインをもらったと、大喜びで話していました。
Fさん、今も色紙持っているかな。

 


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女帝 小池百合子

2022-07-01 11:58:10 | 読書メモ

小池百合子東京都知事を題材に、石井妙子氏が著した
「女帝 小池百合子」を読了。
 
前半の数章では、小池氏の盛られた経歴や嘘が暴かれますが、
いくらゴシップ好きの私でも、少々後味が悪くなりました。
誰だって履歴書にちょっと色をつけるのは許される、そう
思っていたので。しかし、政界に進出してから今日までの
後半は、興味深く読みました。
 
小池さんは良くも悪くもドライで、地盤を耕すなんてことは
絶対にしないタイプ。耕してない畑に愛着などないから、
新しい選挙区がオファーされれば、それに乗っかれる。
人とのつながりが希薄という小池さんの弱点を補って
いるのが、メディアを巧みに操る能力と言えそう。
クールビズや液体ミルクのキャンペーンは、上手でしたよね。
その裏で、環境大臣として、水俣病やアスベスト被害者には
こよなく冷淡なのだけど、それはまた社会の映し鏡のようでも
ありました。
 
最後まで読み通し、著者が問うているのは、彼女の作り出した
「物語」を増幅させ、世に出るのを手助けしたマスメディア
の責任なのだと感じました。
小池さんに取り込まれた政財界の重鎮も、どうなんでしょうね。

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日本迷走の原点 バブル 1980-1989  永野健二著

2017-11-18 14:22:28 | 読書メモ

日本迷走の原点 バブル 1980-1989

永野健二(新潮社)

30年前バブルがなぜ起こったのか、知りたくてこの本を
手に取りました。金融知識のない主婦でも、あの時代が
生み出された背景を、おぼろげながらつかむことが
できます。

著者は「バブルとは、グローバル化による世界システム
の一体化のうねりに対して、それぞれの国や地域が固有の
文化や制度、人間の価値観を維持しようとする時に生じる
矛盾と乖離であり、それが生み出す物語である。」と
言います。あの頃、大企業は銀行から自立し、社債を発行して
市場から資金を調達し始めていました。銀行は優良な貸出先
を失いつつあり、新たな貸出先を見出さねばなりませんでした。
折から、プラザ合意後の円高不況に対処するため、超金融緩和
政策が取られました。「土地は上がり続ける」誰もがそう信じて
いた時代、銀行は土地を担保にどんどん融資を拡大し、バブル
を膨らませて行きました。

本書の良いところは、バブルを生み出した責任者たちを炙り
出しながら、バブル紳士などと言われて蔑まれた人々を
見直している点です。AIDSとあだ名された(麻布建物、
イ・アイ・イ・インター
ナショナル、第一不動産、秀和)の
経営者たちを取り上げ、
彼らの苦しかった生い立ち、反骨の
精神を温かい目で見つつ、
成り上がりの精神さえも評価して
います。ただし、日本
長期信用銀行を潰した男と言われる、
イ・アイ・イ・インター
ナショナルの高橋治則氏に対しては
一貫して厳しい。著者は
「高橋治則の軌跡を追っても、何が
彼の夢だったのか、30年近い
年月を経ても思い浮かんでこない。
資本主義の舞台で暴れまくった
成り上がり者の持つエネルギー
も感じられない。努力して成り上が
ることをあざ笑うかの
ような生き方だった。」と断じています。


本書では、ブーン・ピケンズ氏と小糸製作所問題も取り上げられて
いました。実は小糸の株を買い占めていたのはピケンズ氏ではなく、
麻布建物の渡辺喜太郎氏で、買い集めた小糸株をトヨタグループに
肩代わりさせることを目論んでいたものの、それに失敗し、
ピケンズ氏を使ったのだ、ということを知りました。
渡辺喜太郎氏がトヨタに株の肩代わりを働きかける際には、自民党の
故安倍晋太郎氏に仲介を頼み、実際に安倍氏がトヨタに話を
持ちかけていたことには、驚きました。これを蹴ったトヨタの
豊田英二会長は、のちに雑誌のインタビューでこう答えたそうです。
「(トヨタが小糸株を買い取るという筋書きに)安倍さんは、
大分こだわっておったけどね…安倍さんはちょっと深入りし過ぎた
よ。あんなの深入りしちゃいかんわ、政治家は。しかも、将来
(総理)を考えている政治家はね。」
 
 

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