日本迷走の原点 バブル 1980-1989  永野健二著

2017-11-18 14:22:28 | 読書メモ

日本迷走の原点 バブル 1980-1989

永野健二(新潮社)

30年前バブルがなぜ起こったのか、知りたくてこの本を
手に取りました。金融知識のない主婦でも、あの時代が
生み出された背景を、おぼろげながらつかむことが
できます。

著者は「バブルとは、グローバル化による世界システム
の一体化のうねりに対して、それぞれの国や地域が固有の
文化や制度、人間の価値観を維持しようとする時に生じる
矛盾と乖離であり、それが生み出す物語である。」と
言います。あの頃、大企業は銀行から自立し、社債を発行して
市場から資金を調達し始めていました。銀行は優良な貸出先
を失いつつあり、新たな貸出先を見出さねばなりませんでした。
折から、プラザ合意後の円高不況に対処するため、超金融緩和
政策が取られました。「土地は上がり続ける」誰もがそう信じて
いた時代、銀行は土地を担保にどんどん融資を拡大し、バブル
を膨らませて行きました。

本書の良いところは、バブルを生み出した責任者たちを炙り
出しながら、バブル紳士などと言われて蔑まれた人々を
見直している点です。AIDSとあだ名された(麻布建物、
イ・アイ・イ・インター
ナショナル、第一不動産、秀和)の
経営者たちを取り上げ、
彼らの苦しかった生い立ち、反骨の
精神を温かい目で見つつ、
成り上がりの精神さえも評価して
います。ただし、日本
長期信用銀行を潰した男と言われる、
イ・アイ・イ・インター
ナショナルの高橋治則氏に対しては
一貫して厳しい。著者は
「高橋治則の軌跡を追っても、何が
彼の夢だったのか、30年近い
年月を経ても思い浮かんでこない。
資本主義の舞台で暴れまくった
成り上がり者の持つエネルギー
も感じられない。努力して成り上が
ることをあざ笑うかの
ような生き方だった。」と断じています。


本書では、ブーン・ピケンズ氏と小糸製作所問題も取り上げられて
いました。実は小糸の株を買い占めていたのはピケンズ氏ではなく、
麻布建物の渡辺喜太郎氏で、買い集めた小糸株をトヨタグループに
肩代わりさせることを目論んでいたものの、それに失敗し、
ピケンズ氏を使ったのだ、ということを知りました。
渡辺喜太郎氏がトヨタに株の肩代わりを働きかける際には、自民党の
故安倍晋太郎氏に仲介を頼み、実際に安倍氏がトヨタに話を
持ちかけていたことには、驚きました。これを蹴ったトヨタの
豊田英二会長は、のちに雑誌のインタビューでこう答えたそうです。
「(トヨタが小糸株を買い取るという筋書きに)安倍さんは、
大分こだわっておったけどね…安倍さんはちょっと深入りし過ぎた
よ。あんなの深入りしちゃいかんわ、政治家は。しかも、将来
(総理)を考えている政治家はね。」
 
 
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